考え、議論する道徳

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無毒のヘビを飼っている小学1年のクラスがあった。体長や重さを記録したり、図鑑や絵本を作ったりしているうちに最初は怖がっていた子どもも愛着を抱くようになる。せっせとカエルを取ってきては餌やりを続けた。

 2年生になったある日。印刷された絵本を手にした5歳の男児から手紙が届いた。「カエルがかわいそう」。子どもたちの大論争が始まる。「カエルはヘビに食べられるために生きているんじゃない」「じゃ、何のために生きているの」「人間だって肉や魚を食べているじゃない」…。

 信州大付属長野小の実践を描いた「教科書を子どもが創る小学校」(小松恒夫著)。「命」のやりとりをどう考えるか。時に泣きながら懸命に小さな頭を巡らす姿を伝える。総合学習の先駆けになった取り組みだが、著者は「道徳」でもあると説く。

 小学校の道徳が来春から正式教科になり、教科書が使われる。「節度、節制」「規則の尊重」など学習指導要領で示した22の徳目に沿っているか。教科書検定で文科省は目を光らせた。「伝統と文化の尊重」が不十分と指摘されて「パン屋」が「和菓子屋」に差し替わった教科書もある。

 型枠に流し込んだ全国共通の教科書で、文科省の掲げる「考え、議論する道徳」になるのか。長野小の子どもたちは目の前のヘビやカエルの身になって考え、そして自然に返すことを決めた。身の回りの問題こそが良い教材になる。教科書はそれぞれの心の中で編めばいい。

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