天地人 4/2

 「込」「畑」「辻」「栃」「峠」…。辞典を見ると、これらの字は「国字」とある。日本製の文字、日本でつくられた漢字だ。訓読みしかないのがほとんどで、音読みがない字が多いという。

 「働」という字も国字だそうだ。「はたらく」の本来の意味は、「からだを動かす」「行動する」。そこから「仕事をする」「労働する」の意味が生まれ、その意味をあらわすために、「人」と「動」を合わせて「働」という国字ができた(「日本語源大辞典」)。

 国字は訓読みだけが多いと書いたが、「働」は「はたらく」という訓のほかに「どう」という音読みを持つ。「いかに日本人がこの国字を重要視しているかわかろうというものだ」と国語学者の金田一春彦さんが書いている(「美しい日本語」角川ソフィア文庫)。

 その「働」の在り方を見直そうと政府が先ごろ、働き方改革の実行計画をまとめた。安倍晋三首相が力を入れる目玉政策だ。懸案の長時間労働や非正規の格差の改善へ一歩踏み出した形で、首相は「歴史的な一歩」と自賛した。

 ただ、企業や働く人の自主的努力に委ねられた面も多いという。絵に描いた餅に終わらないか気になる。金田一さんは「勤」「労」「務」などに比べ、「働く」という字は、人がいきいきと動いているという語感がある-とも述べている。誰もがそう思える「働」という字にしたい。


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 「全然おかしい」「立ち上げる」といった座りの悪い言葉が広まり、新語が生まれては消える。国語学の大家として知られた著者が、物事を説明する6つのコツ、「が」と「は」の使い方などを伝授する。2002年刊の新書を改題・文庫化。日本語について改めて考えることができる、洒脱しゃだつな一冊である。
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