ナパームガール

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中日春秋 4/2

 ピュリツァー賞を受賞した、この有名な写真には、たくさんの物語がつまっている。撮影場所はベトナムの旧サイゴン近郊のチャンバン。撮影は一九七二年六月。正式な題名は「戦争の恐怖」だが、世間では、こっちの名で知られる。「ナパーム・ガール」(ナパーム弾の少女)

その名に写真の構図を思い出した方もいるだろう。写っているのはベトナム戦争当時、九歳だった少女である。

南ベトナム軍のナパーム弾が村に落ちた。背後から迫る黒煙。焼けた衣服を脱ぎ捨てまる裸の少女がカメラに向かって逃げてくる。カメラが真正面から撮影した少女の顔は泣いている。全世界に向かって泣き叫んでいるように見える。

その写真はベトナム戦争終結に向けた国際社会の機運を後押しした。世界を揺さぶった一枚の写真。それは大きな物語である。

そしてもう一つの物語。こっちの方はあまり知られていないか。写真の撮影後のことである。カメラマンは少女のひどい傷に泣き叫んだ。「なぜ、誰もこの子を見てやらないんだ!」。このままでは助からない。取材を打ち切った。少女を抱え、自分の車で病院に連れていった。少女は一命を取りとめた。今も元気で暮らしている。

写真を撮り、少女を救ったのはAP通信の報道カメラマン、ニック・ウットさん(66)。ベトナム系米国人。先週の水曜日にAP通信を退職、引退した。

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