アリガトウとゴメン

日報抄 4/1

 胸に聞いてみる。親には言えない夢がうずく。そんなときはどうする。心の声に正直になろうとウソの力を借りることだってある。心配をかけまいと、言いつくろって、扉をこじ開ける。

その達人はグフフッと笑うあの人だ。笑福亭鶴瓶さんは高校を卒業する際、父親から「どうするねん?」と聞かれた。そこで出任せをひとつ。「渥美清さんの弟子になる」と。本当は「落語家に」と言いたかった。

でも食っていくのは至難の業。親を説得できるはずもなく、たまたま目にした新聞広告の「寅さん」が口をついて出た。そのまま大阪から東京へ飛び出し、渥美さんの事務所を訪ねてしまう瞬発力がある。

寅さん不在のため、あえなく退散し進学した後も、やっぱり落語をあきらめきれない。中退し六代目笑福亭松鶴さんの門をたたくと、師匠は「親を連れてこい」と言う。ここでもウソで切り抜ける。

「ケンカして相手が親と謝りに来い言うてんねん」。それで父と菓子折りを手に相手の元へ。「父親はビックリしてましたよ。『あ、松鶴さんや』って。師匠は知らんから『親が承知なら』言うてね。全然承知やないのに」。師匠の家を出た途端「お前というやつは!親をだまして」と、どつかれた(斎藤明美「家の履歴書」)

世渡りしていけそうな、たくましいウソだ。父の一喝は「頑張れ」の裏返しか。この4月、親に謝りたいゴメンの道を進む若者もいるだろう。正直に歩めばいい。アリガトウとゴメンを繰り返し、たくましくなる。

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