高等遊民

越山若水 3/30

明治末期に「高等遊民」という流行語があった。大学などの高等教育を受けながら職業に就かず、ぶらぶら自由に暮らしている者のこと。夏目漱石の造語とされる。

背景に就職難があったとはいえ、経済的に恵まれた家庭の出自のため生活には余裕があった。希望しない仕事をするよりは、読書などで気ままに過ごしていた。

ところが同じ大学や師範学校を卒業しながら、苦しい境涯にありとにかく働かざるを得ない人々もいた。彼らを「高等細民」あるいは「洋服細民」と呼んだという。

一見すると人並みの洋服を着ているが、実は薄給に甘んじて生活に困窮しているサラリーマンのことを指すらしい。「俗語発掘記 消えたことば辞典」(米川明彦著、講談社)から教わった話である。

安倍晋三首相が「歴史的な一歩」と胸を張る働き方改革の実行計画。その柱は正社員と非正社員の待遇差をなくす同一労働同一賃金、残業時間の罰則付き上限規制の実施だ。

今秋に関連法案を提出し、2019年度施行を目指す。派遣やパートなど非正規雇用が4割を超え、過労死が後を絶たない現状を思えば前進といえる。

ただ残業上限に抜け道がある、同一賃金の早期実行に猶予がある―と実効性に疑問符がつく。日本を「一億総中流」と言ったのは遠い昔。今や貧困率は16%と世界でも高い。「非正規細民」の改善は急を要する。

…………………………
20170330111707710.jpeg



内容紹介

消えて行った日本語=死語、そのなかでも一段品の落ちる単語=俗語ばかりを収録。辞典風に五十音順に並べ、さらに詳細な説明や派生を加えた。俗語研究の第一人者による、ひとつの近代日本史。
メッチェン、モダンガール、ニコポン、人三化七、土曜夫人、ヤンエグ、アッシー君……時代に強烈なインパクトを与え、しかし公に使われるわけはないことばたちは、いつの時代も存在した。それらの多くは次第に人々の感覚と合わなくなり、あるいは世相の変化でそれが表す対象を失い、いつの間にか役目を終えて、消えていく。
そんな言葉ばかり約100語をピックアップ。その成り立ちは単語を縮め、くっつけ、ふざけ倒し……実に気が利いている。明治から現代までの時代背景が、どのページからも強く立ち上ってくる。
試し読みする

目次
まえがき
(本編)
あ行
アッシー君/江川る/エンゲルスガール/おかちめんこ ほか
か行
ガチョーン/銀ぶら/ゲバ/ゲル ほか
さ行
サイノロジー/三高/シェー/シャン ほか
た行
ちちんぷいぷい/チョベリバ/チョンガー/テクシー ほか
な行
ナオミズム/濡れ落ち葉 ほか
は行
ハイカラ/フィーバーする/瘋癲 ほか
ま行
みいちゃんはあちゃん/メッチェン ほか
や行
宿六/山の神/ヤンエグ/よろめき ほか
ら行
寮雨/ルンペン/冷コー ほか
(解説)
1 俗語とは
2 流行語の発生と消滅
3 俗語が消えて行く理由
4 若者ことばの変化
関連記事