鳥語

斜面

誰もが欲しくなった覚えがあろう。昔話の「ききみみ頭巾」は動物の鳴き声を同時通訳してくれる。これをかぶった正直者が小鳥のおしゃべりから長者の娘の病気を知り、見事に治してめでたしめでたし―。動物と話せるのは大昔から人類の夢に違いない。

 20世紀を迎えて当時の新聞が100年の進歩を予言した中にもあった。新幹線、テレビと大方は実現したが、頭巾は難しかった。27日付本紙で紹介された京都大生態学研究センターの鈴木俊貴さんの研究は幻の夢への一歩かと思わせる。

 長年、軽井沢町でシジュウカラを観察し「言葉」があるのに気付いた。単語のように異なる鳴き声の要素を持ち、組み合わせることで170種類以上の複雑な意味を伝えていた。天敵のヘビとカラスは区別して鳴き、ヒナが身をかわすのを助けるという。

 単語をつなぐ言語能力は人だけではなかった。そう知れば“鳥語”に聞き耳を立てたくなる。幼児期に失明したエッセイストの三宮麻由子さんは鳥の声で景色が立体的に見えるようになった。著書「鳥が教えてくれた空」に書いている。

 光がなくてもスズメの鳴き方で夜明けや日の長さ、近くに猫がいることも分かる。空の高さ、季節の移ろい、鳥の気持ちまで見えてくる。もっぱら視覚に頼るより深く自然に触れることができるだろう。2人に倣って鳥語に耳を澄ませるには格好の時季になる。


20170329165344433.jpeg


 緑の中、太陽の光を浴びながら自然の中を散策したい――、そんな季節になりましたね。
 この時季にオススメなのが、三宮麻由子さんの『鳥が教えてくれた空』。

 4歳で視力を失った著者、三宮さん。
 しかし、ピアノなどに触れ、音のメカニズムに興味を持ちはじめたことから、しだいに、鳥の声が聞き分けられるようになっていく……。

 鳥だって私たちと同じように、さみしがったり、恋しがったり、仲間同士で「起きてるか?」「起きてるよ」と挨拶しあったりしているのです。
 著者は、鳥たちの会話に耳を澄ませ、そしていつの間にか話せるようになりました。
 今では200種以上の鳥の声が聞き分けられるそうです。

 また、たとえ、「世界」を見ることができなくても、鳥たちの元気な声が聞こえるのは晴れの日で、全然声が聞こえない日は曇りや雨だと気づくことができます。
 山の中では、鳥の声から、空の高さ・森の深さや水の存在を知ることができるのです。

 光を失った著者は、二次元でしか理解できなかった「世界」を、鳥の声によって、立体的に感じるようになります。

 私はこの本を読んでいて、一つ一つのエピソードに感動してしまい、心がどんどん浄化されていく感覚をおぼえました!!

 たとえ都会の中の公園でも、ふと目を閉じて耳を澄ませばいきものや自然の声が聞こえてくるはず。

 忙しい毎日の中で、そんな時間を持つことの大切さを感じる一冊です。
 ぜひ、心の深呼吸をするため、ぜひこの本を手にとってください。
 2007年3月新刊で、三宮麻由子さんのエッセイ『そっと耳を澄ませば』も刊行されました。こちらもあわせてオススメです!

 また、三宮麻由子さんにご興味がある方は、ホームページ「三宮麻由子の箸休め」をご覧ください!
http://www006.upp.so-net.ne.jp/hashiyasume/

関連記事