通学路の安全対策

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忙人寸語 3/29

父親は言う。「いいか、象を見たら絶対に近づくな。向かってきたら全力で逃げろ」。男の子が真剣な表情でうなずく

ドキュメンタリー映画「世界の果ての通学路」(2012年、フランス)には、険しい通学路を登校する世界の子どもが登場する。冒頭は、ケニアで片道15キロのサバンナを2時間かけて通学する11歳と6歳の兄妹のエピソード。両親は、2人が無事到着するよう毎朝のお祈りを欠かさない。

過酷なのは、そうした国ばかりではないのかもしれない。25日、我孫子市の排水路脇でベトナム国籍の小学3年生、レェ・ティ・ニャット・リンさん(9)が遺体で見つかった殺人・死体遺棄事件。

自宅から学校まで、わずか数百メートルの通学路の途中で連れ去りなどの事件に巻き込まれたとみられている。日本のどこにでもある駅前の住宅街。何があったのか。

「登校時には『おはよう』と手を振ってあいさつしてくれた」。取材では、その明るく、元気な性格で人気者だったことが分かる。エピソードを物語るような、かわいらしい写真を見る度に胸が痛む。家族の絶望は察するに余りある。

「パイロットになりたい」「先生になりたい」。映画に出演した兄妹は、それぞれに夢を語っていた。リンさんも夢があったろうに。残虐な犯人の早期逮捕はもちろん、事件・事故から幼い命を守るための通学路の安全対策も強く望みたい。


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あなたは信じられますか。毎日往復30kmの通学路を、たった4時間で駈け抜ける兄妹がいることを。
見渡す限り人のいないパタゴニア平原を、馬に乗って通学する兄妹がいることを。
 『世界の果ての通学路』は、道なき道を何時間もかけて通学する子どもたちを追った、驚きと感動のドキュメンタリーだ。 本国フランスでは2013年9月25日よりドキュメンタリー作品としては200館と破格の扱いで公開された。現在、公開18週目に突入、動員数は123万人を越えている。(2/4現在)2013年にフランスで公開されたドキュメンタリー作品では第1位の成績に登り詰めたのだ。8月にスイスで開催されたロカルノ国際映画祭で絶賛された本作が、日本でついに公開される。
 日本をはじめ、先進国では子どもが教育を受けることは義務であり権利とされている。学校は徒歩圏内、もしくはスクールバスや公共交通機関で通える範囲に設置されているが、本作に登場する4人の子どもたちの教育環境は全くそうではない。

 野生のキリンや象が生息するサバンナを駈け抜けるケニアのジャクソン。山羊飼いの仕事を終えてから、愛馬で学校へ向かうアルゼンチンのカルロス。女子に教育は不要とする古い慣習が残る村から、寄宿学校に通うモロッコのザヒラ。生まれつき足が不自由で、弟たちに車椅子を押されて登校するインドのサミュエル。 通学路は危険だらけで、大人の足でも過酷な道のりなのだ。それでも子どもたちは学校へまっしぐらに向かう。ひたむきな彼らを見て気づかされるのは、教育とは将来を切り拓くためのパスポートだということだ。

4人の決死のサバイバルを収めたのは、12年間もケニアのマサイ族の村に通い詰め、部族の伝説を映画化した『マサイ』(2003)のパスカル・プリッソン監督。監督とプロデューサーは、辺境の地から通学する子どもをキャスティングするために、ユネスコと教育関連の問題に取り組む国際組織「aide-et-action(エッド・エ・アクション)」へ協力を依頼。世界中から60のデータが寄せられ、プリッソン監督自身が各地の学校へ赴き、4カ国4人に絞っていった。 どうして彼らはそんなに苦労してまで学校に行くのだろう?

 別の大陸、違う言語、宗教、生活環境の中で暮らす4人の子どもたちは、真っ直ぐな瞳で同じ思いを語る。

「夢をかなえたいから」

世界の果ての通学路から、希望に満ちた地球の今と未来が見えてくる。

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