「学力は読み書きから」

水鉄砲 3/28

 10年近く前、出前授業が縁で懇意になった小学校の先生がいる。彼女が担任する複式学級の5、6年生の読み書き能力が高く、理解力の素晴らしさに感嘆した。

 指導の秘密を聞くと「特別のことはありません。あえていえば、3行日記の効果でしょうか」といって、子どもたちとの「連絡帳」を見せてくださった。そこには子どもたちが毎日の喜怒哀楽を3行につづり、それに先生が感想を書き込んでいた。

 たかが3行の文章だが、毎日、読み手に伝わるように仕上げるには手間がかかる。それでも、書くたびに感想が返ってくるのが励みになって書き続ける。その積み重ねが文章力を養い、理解力を育てる。だから転任先でも、教え子が何人も全国規模の読書コンクールで入賞するなど、素晴らしい成果を挙げてこられたのだろう。

 この先生のことを思い出したのは、県教委が新年度から特別の学力テスト対策を立てると聞いたからだ。授業改善用DVDの作成、問題集の活用、学校図書館やパソコンを利用した調べ学習などを考えているそうだ。

 しかし、共通の問題集や指導用DVDを作っても、それが子どdもたちの学びの意欲につながらなければ意味がない。それよりも、先生が一人一人に向き合い、親身になって見守り、導くことの方が大切ではないか。

 読み書きの能力は、子どもたちの自発的な学習によって身に付く。それを支えるのが、気持ちのこもった励ましである。 

^_^ 書くことに親しませる「三行日記・生活体験作文」

blog 田中先生より引用

三行日記始めました。
「書くこと」の指導って,大事なんだけどなかなか時間が取れないのよねぇ…。というのは私が毎年抱えている悩みです。今回はそんな「書くこと」の指導についてのお話です。
「うーん」と悩んでいるだけでは仕方がないので,子どもたちの様子に合わせて色々な取り組みをするのですが,今年は先輩先生に教わった「三行日記」を自分なりに噛み砕いて始めてみることにしました。
流行の「冷やし中華始めました。」(すでに古い!?)風のタイトルです。


★以下 平成23年9月16日学級だより「すきやき」より★


先週の中ごろから,予定表の宿題の欄に「三行日記」と書いてあることにお気づきでしたでしょうか。子どもたちからは「せんせい~,三行日記ってなに??」とか「また宿題増えるの!?」という具合に質問の嵐でした。
詳しくは子たちにお聞きいただくとして,簡単に言うと三行日記は「三行で書く日記」です。三行より多すぎても少なすぎてもいけません。三行ぴったりの量で,その日のちょっとした「心の動き」を書き留めてほしい。そのために,黒板にこんなことを書きました。

目で見たものをかく。
耳で聞いた音をかく。
鼻でかいだにおいをかく。
舌で味わった味をかく。
で,どうしたの?

最後の「で,どうしたの?」が,作戦1です。
子どもに何か文を書かせるとき,私たちはつい「どんな気持ちだったの?」とか「そのとき何を考えたの?」などと聞いてしまいます。子どもたちはそれに応えるべく「おもしろかったです。」とか「楽しかったです。」と書くわけです。しかし実際は,一口に「おもしろい」と言っても「ワハハと笑ってしまう」や「しみじみと興味深い」や「くすっと微笑んでしまう」や「えへへと照れてしまう」など,いろいろな「おもしろい」があります。とはいえ3年生の子どもたちにこれらの表現を使い分けろというのは,ちょっと難しい。
そこで「で,どうしたの?」の出番です。気持ちや考えに限らず,何かを見たり聞いたり嗅いだり味わったりした後の,自分の「リアクション」を書いてごらん,と言うわけです。そこには何という名前の感情があるのか,今はよくわかりません。その感情にぴったりと当てはまる言葉が見つかるときが来るかもしれないし,そんな言葉はそもそもないのかもしれません。しかし,なんでもかんでも「おもしろい」とか「楽しい」という単純な言葉で自分の感情を表現してしまうよりは,ずっと素直で伝わりやすいのではないかと思うのです。
三行日記に書くことで,自分の気持ちや感情をうまく表現する方法を身に付けてほしい。これが作戦1です。

ちなみに三行日記は,3分間で書きます。「はい書きましょう」と言われてから「ええと,何を書こうかな」と考えていてはとても間に合いません。そのために,普段から「三行日記に書けそうなこと」を探しておくんやで,と話しました。それは,特別なイベントや大きな事件を探せということではありません。「日常のほんのちょっとした出来事」や「普通なら気にも留めないこと」にスポットライトを当ててみよう,ということです。
自分の身の周りにちょっと鋭いアンテナを張ることで,毎日を豊かに過ごしてほしい。これが作戦2です。

作戦1も作戦2も,子どもたちが理解するのはかなり難しい内容です。そこで,「あ,こう書けばいいんだ」とか「こんなことなら,自分の周りにもあったぞ」と思えるように,ぜひ真似してほしい日記を紹介していきます。もちろん全員分は載せきれませんので,ときどき「どんなん書いたん?」と聞いてみてくださいね。


★その後★


始めてしばらく経ちますが,三行という分量は,3年生が毎日こつこつ続けるにはちょうどいいぐらいかな,と感じています。と同時に,毎日楽しんで書かせることの難しさも感じます。
実はこの三行日記,誤字脱字や文法の間違いなどについては,ほとんど指導をしていません。子どもたちの日記は,あちこち文字が抜けたり,「を」と「お」,「は」と「わ」の書き間違いがあったりと,なかなか読みにくいのですが,それについても赤ペンで直したりはしていません(子どもが書いている最中に気がついたときは指摘しますが)。それは,赤ペンで誤字や脱字を訂正することが,上に書いたような「作戦(=目的)」達成の妨げになるのでは,と考えたからです。
子どもたちにとって,たった三行とはいえ,毎日のことを日記に書くという作業は初めてです。それだけでも大変なのに,せっかく書いた日記の字を片っ端から訂正されていたらどうでしょう。「よし,今日も書こう」という気持ちで三行日記に向かうことができないんじゃないかな,と思います。
そんなわけで,今は心を鬼にして,誤字脱字を訂正したい気持ちをぐっとこらえて,子どもたちが「楽しく書けるように」指導している最中なのです。

そのほか,「で,どうしたの?」という言葉がけが子どもたちの日記にどう影響しているかとか,三行日記を毎日書くことで日常生活に変化があったのかなど,検証すべきことや,ほかにも「書くこと」について考えていることがありますが,それはまた別の機会にしたいと思います。

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