フキノトウ

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天鐘 3/26

フキノトウ、東北では「バッケ」「バッケァ」などと呼ぶ。アイヌ語で子供を背負うという意味の「パッカイ」が語源らしい。多少変化するが北海道と東北で広く使われる。

北東北では主に「バッケ」、宮城で「バッケァ」、山形や福島は「バンケ」。また遠野で「バッカイ」、二戸は「バンカイ」(小田正博氏編著『南部詞の世界』)など地域でも変わるが基本形はバッケである。

確かに土中から顔を出す蕾(つぼみ)は、背中を丸めて子供を背負っているようにも見える。今が旬で天ぷらや煮物もいいが、極め付きはほろ苦く風味豊かなバッケ味噌だろう。熱々のご飯で頬張れば春の訪れを実感できる。

バッケはフキの根っ子から出る花茎でフキはアイヌ語で「コロコニ」。あのフキの葉の下で暮らす妖精「コロボックル」の語源だという。バッケ味噌を味わうとなぜか小さな妖精達のファンタジーを思い出す。

先月死去した童話作家の佐藤さとる氏が、コロボックル伝説を基に描いた『だれも知らない小さな国』。小川のフキの葉の下でひっそり暮らす妖精達の物語で、子供の頃、友達と夢中で「小さな国」を探し回った。

妖精は小柄で他民族との接触を嫌い、北に追われて姿を消した北千島アイヌとの説もあるらしい。樺太、千島、北海道、東北に今も残るアイヌ語の地名や方言。バッケがほろ苦いのは北方文化のそんな数奇な運命のせいかもしれない。

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 六戸町犬落瀬の医師小田正博さん(63)が、旧南部藩領の地域の方言をまとめた「南部詞の世界」改訂版を自費出版した。全三巻・合計二千百六十六ページに上る資料に、江戸時代から現代までの約五万語もの南部詞(方言)を収録した小田さんは「地元で使われる言葉の豊富さを実感し、大切にするための一助になればうれしい」と話している。
 小田さんは盛岡市出身。一九八四年に同町で医院を開業した。来院する患者が病状や身体について自分の知らない言葉で話していたため、方言集で意味や語源を調べてみたことがきっかけとなり、方言研究を始めた。
 県内外の図書館や古本屋に通い、南部方言に関する資料を調べるうちに、「地域の大切な宝物である方言を使う人が少なくなってきたため、今のうちに書き残し、次の世代に伝えなければいけない」と考え、出版作業に取り掛かった。
 二〇〇四年に旧南部藩領に当たる青森県南、岩手県中北部、秋田県北東部の方言をまとめた「南部詞の世界」を刊行した。その後も各地に足を運んで住民から直接聞いたり、図書館などで調べたりした方言を追加し、今月九日に改訂版として発行した。
 改訂版には約五万語を収録。分類は自然・方角、生物、体、衣食住、生産・労働、運輸・交通、学芸、習俗・信仰、社会など多岐にわたる。
 分類別の章ごとに五十音順で標準語を表記し、その言葉を意味するさまざまな方言と、使われる地域名を併記した。日常的に使われる単語を表す方言の数は特に多く、例えば「父」は「おど」「おとう」「だだ」「てで」「とっちゃ」「とど」など百二十六語にも及ぶ。
 自らが関心のある自然や動植物、人間の身体に関する方言も力を入れて収録。また、同じ意味の言葉が各地域で異なる方言で使われているものの一部を選び、その地域分布の状態を旧南部藩エリアの地図に印で書き込むことで表現した。
 小田さんによると、青森・岩手など県ごとの方言集は既にあるが、北東北三県にまたがる旧南部藩エリアの方言をまとめたものは少ないという。収録語数の多さに加え、この点でも貴重な資料として注目を集めそうだ。
 
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