ジュリア 自閉症

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中日春秋 3/26

「やあ、ジュリア。初めまして」。ビッグバードが絵を描いているジュリアに声をかける。「…」。ジュリアは返事をしない。黙って絵を描いている。

五十年近い歴史のある米国の幼児向け番組「セサミストリート」。新しいマペット(操り人形)が加わった。四歳の女の子ジュリア。歌うことが大好き。オレンジ色の髪。そして、もう一つの個性は自閉症であること。

ジュリアの起用は自閉症の子のいる家族からの声だったそうだ。番組を制作する非営利団体「セサミワークショップ」はジュリア登場まで五年近く議論と調査を続けた。無理もない。自閉症への理解を深めるためとはいえ、うまく伝わらなければ、からかいの対象になる危険もある。

現実という観点で最終決断したという。米国では就学児のうち、六十八人に一人の割合で自閉症がいる。理解されないジュリアが現実にいる。

返事をもらえなかった冒頭のビッグバード。「ジュリアはぼくが嫌いなのかなあ」と考えるが、そうではないんだと番組は説明する。好きなんだけれど、返事が遅れることもある。それがジュリアの方法。人によって方法は違うけれど、あらゆる方法、個性を認め合おう。一緒に遊ぼう。それがメッセージである。

「自分の子どもの友だちにも見てほしかった」。ジュリアのマペットを操演する女性の言葉。お子さんが自閉症なのだそうだ。

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小学校5年になる孫は学校から帰ると、自分の頭を殴り身を震わせて訴える。「おれが一番悪いって分かってる。でもどうしたらいいか分かんないの」。発達障害の本人と家族の苦悩を書いた文章に胸が痛んだ。

 本紙くらし面に先日載った69歳女性の「私の声」だ。コミュニケーションや感情の制御が難しい。理解されない苛立(いらだ)ちから教材などを壊す。友達もできない。昨年の発達障害者支援法改正で支援策が打ち出されたとはいえ、障害への理解は広がっていない。

 米国の幼児向け教育番組「セサミストリート」に4月から新しいマペット(操り人形)が登場する。自閉症の4歳の少女「ジュリア」だ。歌が大好きで多くの曲の歌詞を暗記している。仲間が握手を求めても無視する。短い単語を繰り返す話し方になりがち。そんなキャラクターだ。

 セサミのキャラは個性豊か。「ビッグバード」は失敗してうろたえるけれど粘り強い。「オスカー」は惨めな状態が一番幸せというひねくれ者だ。お互い異なる個性を尊重し、理解し合い、寛容の心を育てる。放送を貫く「哲学」がジュリアを誕生させる。

 「自分らしさ」とは何か。自閉症の作家東田直樹さんは精神科医との往復書簡集「社会の中で居場所をつくる」で書いた。山頂に咲く珍しい花ではなく手を伸ばせば届く芝生のようなもの、と。誰にも心地が良い芝生の広場を増やしたい。


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アメリカの子供向けテレビ教育番組「セサミストリート」に新しいマペット(人形)が加わった。自閉症のある女の子、ジュリアだ。

ジュリアは、赤毛でお気に入りのうさぎのぬいぐるみを持っている。ジュリアは2015年、セサミストリートのストーリーブックに初めて登場した。2017年4月からは、ケーブルテレビ「HBO」と公共放送局「PBS」でテレビデビューする。

アメリカでは自閉症の子供が増えている。アメリカ疾病予防管理センターの調査によると、学校に通う子供68人に1人に自閉症の症状がある。

セサミストリートの制作者たちは、ジュリアをテレビに登場させることで、子供たちが自閉症の友人とどう遊んだらいいのかを理解する手助けになればと考えている。

自閉症の子供たちにとっても、自分と共通するキャラクターがテレビに登場することは心強いだろう。

ジュリアが登場する第1回のエピソードでは、ジュリアとビッグバードの間でちょっとしたいざこざが発生する。

ジュリアとビッグバードは、アビーとエルモの紹介で出会うのだが、ジュリアはビッグバードと握手することをためらう。それを見たビッグバードは、ジュリアに嫌われていると思って悲しむ。しかしエルモはビッグバードに、ジュリアには自閉症があると説明し、こう言う。「ジュリアは他の人とちょっとやり方が違うんだよ」

ジュリアをつくった番組の作家クリスティーナ・フェラーロ氏は、CBSのテレビ番組「60ミニッツ」のインタビューで、自閉症のある子供たちが直面する現実を伝えたいが、ジュリアを発達障害を持つ子供たちが描かれがちなキャラクターにするのは避けたい、と語った。

「自閉症は、ある一つのタイプに限定されるものではありません。自閉症のある子供たちは、それぞれ異なります。よく、こう言います。『ひとりの自閉症のある人に出会ったとしたら、それはひとりの自閉症のある人に出会ったに過ぎない』と」

しかしそれでも、自閉症のある子供たちが見せる行動や表現方法を、ジュリアを通して伝えたいと考えている制作者たちは、どういった表現方法が一番いいのか、自閉症を持つ子供がいる家族をサポートする団体に相談しながら探っている。

第1回のエピソードでは、ジュリアはビッグバードとの握手を拒む以外にも、大きな音に敏感に反応したり、ゲーム中に興奮したりする。


第1回のエピソードで、セサミストリートが伝えたいメッセージは「インクルージョン」です。エルモがこう言います「みんなジュリアのことがとても大好きだよ。彼女は本当に特別なんだ」

ジュリアを扱う人形師はステイシー・ゴードン。彼女の息子には、自閉症がある。ゴードンは、息子がまだセサミストリートを見る年齢の頃に、ジュリアががいたら良かったのにと60ミニッツのインタビューで語った。

「息子の友人たちが、テレビを通して息子と同じような行動をするキャラクターを知っていたら、学校で息子の行動を目にしても、驚かなかったかもしれません。それに、遊ぶ時には息子はみんなと違う行動をすることも知っていて、それでいいんだと考えてくれたかもしれませんね」
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