休日どろぼう

風土計 3/25

 時間貯蓄銀行の外交員が街の人に持ち掛ける。時間を倹約しましょう-。「歌だの本だの、ましていわゆる友だちづきあいだのに、貴重な時間をこんなにつかうのはいけませんね」。倹約分は銀行に入るという


誘いに乗る人々。例えば理髪師は、客と一言も口を利かずに作業し効率を高めた。でも仕事がちっとも楽しくない。人々の日常は殺伐とする。しかも倹約した時間は「時間どろぼう」に奪われていた。

児童文学の名作「モモ」(ミヒャエル・エンデ著)。ただただ効率を求め、息苦しい社会をもたらす「時間どろぼう」相手に少女が奮闘する物語は、人間らしく生きる時間が失われる社会に警鐘を鳴らす。

豊かで便利になったのに、何かおかしいと感じることが少なくない社会。その一因は、誰かが誰かの時間を奪っていることにあるのではないか。例えば宅配業者に何度も再配達させる消費者もそうかもしれない。

長時間労働も個人の自由時間を奪っている。過重労働解消のために岩手労働局が行った重点監督では、対象事業場の半数に違法な時間外労働があり、過労死ラインを上回るケースもみられた。改善の徹底を求めたい。

対策には法改正が欠かせない。ところが規制案には、年間時間の上限に休日労働を含めない抜け穴が見つかった。これでは「休日どろぼう」が現れかねない。
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