ファーストレディー

中日春秋 3/24

ファーストレディーとは、どれほど重い立場か。ニクソン米大統領のパット夫人は「ファーストレディーとは、世界で最もきつい、無給の仕事です」と語った。

フランクリン・ルーズベルト大統領のエレノア夫人は「私自身の外側に、大統領夫人という別の誰かがいる感覚、“私”というものをどこかに失ってしまったような感覚を、ホワイトハウスを去る時まで覚え続けました」と打ち明けたという。「私」を抑えて「公」の立場に徹する。ファーストレディーとは、それほど厳しく自らを律せねばならぬ立場なのだろう。

今、わが国で問われているのは、首相夫人の公と私である。政府は先週「(首相夫人は)公人ではなく私人であると認識している」という閣議決定をした。

だが本当に「私人」なのか。きのう国会であった森友学園理事長の証人喚問で浮かび上がったのは、そんな疑問である

理事長らが、国有地の利用について首相夫人付きの官僚に聞くと、財務省に問い合わせ、夫人にも説明した上で、丁寧に回答していた。国有地問題とは関係のない夫人付き官僚がなぜかお門違いの申し入れに応対し、「公」の話を「私人」であるはずの夫人に報告した。これはどういうことか。

あいまいな「私」に搦(から)め捕られ、「公」というものがどこかに失われてしまっていたのではないか。今、覚えるのは、そういう感覚である。
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