ナイスファイト

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中日春秋 3/22

その町にある高校が春夏を通じて甲子園に出場したのは一九五八年が最後というから、およそ六十年ぶりのことである。待ちに待った地元はどんなに喜んだことか。岐阜県立多治見高校。残念ながら、二十一世紀枠出場でつかんだ甲子園での夢の時間はほろ苦く終わったか。

一回戦、報徳学園を相手に21対0。被安打21。二十一世紀枠出場校の最大得点差での敗戦。試合終了は二時十分。相手の報徳学園は選抜出場二十一回目。やけに「21」という数字がまとわりついているが、その試合には、別の数字も隠れている。そしてうなだれる多治見高はその数字を誇り、顔を上げるべきであろう。その数字とは、「8」である。

試合記録を見る。多治見高は八つの三振を奪われた。うつむいてくれるな。傷口に塩を塗るつもりはない。注目すべきは三振の中身。八つはいずれも空振り三振である。見逃し三振は一つもない。

想像する。初出場の緊張を。古豪の圧力を。無情な展開の切なさを。それでも選手は縮こまらず、なんとかするんだと力を込めてバットを振った。

すべて空を切った。されどその空振りに選手の信じる心と明日を見る。「バットは振らなきゃ当たらない」。分かっていてもそれが難しい人の世である

ナイスファイト。次の夏を待つとする。なんといっても全国最高気温をかつて記録した多治見の球児たちでもある。
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