板子一枚その下

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中日春秋 3/21

「板子一枚その下は、地獄と名に呼ぶ暗闇も明るくなって、度胸がすわり」。歌舞伎の「白浪五人男」の場面。「知らざあ言って聞かせやしょう」の弁天小僧菊之助に続き、己の素性を語りだす南郷力丸のせりふである。元は漁師で「板子一枚下は地獄」の荒波で鍛えた度胸の良さを自慢している。

度胸のすわる南郷力丸とて、こっちの「板子一枚その下」にはうーむとなるか。東京の築地市場の移転先となる豊洲市場での地下水再調査である。環境基準を百倍上回るベンゼンが検出された。基準を超えるヒ素、シアンも再び確認されている。

敷地内はコンクリートなどで土壌や地下水を遮断しているので地上部は安全と東京都の専門家会議は説明するが、板子一枚ではないにせよ、その下には低くない有害物質の水がある。

「地下水を市場で使うわけではない」「ろ過してポンプアウトして海に捨てればいい」。石原慎太郎元都知事のきのうの百条委員会の発言である。世間の心配をあたかも風評被害や取り越し苦労のように語っていたが、百倍のベンゼンと聞けば、板子一枚の下を怖がるのは当然である。ましてや食品を扱う場所である。

安心とは安全であるという事実と、それにかかわる人物や行政への信頼によって生まれる。

その信頼、信用が残念ながら失われている。誰のせいかって? 「知らざあ言って聞かせやしょう」


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