身から出た錆(さび)

天鐘 3/18

 「身から出た錆(さび)」とは、自らの犯した悪行や過失のために自分に災いが生じて苦しむことの例え。古くから定着していた言い回しで、古い江戸かるたには錆びた刀を眺めて嘆く武士の絵が描かれていた。

このことわざの語源は、お釈迦(しゃか)様の言葉を伝えた仏典『法句経』の一節に何らかの関係があるのかもしれない。「鉄より生まれし錆が鉄を傷つくるごとく、人の悪しき業は己より生じて己を悪しき処(ところ)へと導く」。

防衛省という組織の歯車は錆び付いているようだ。「廃棄した」とされていた南スーダン国連平和維持活動派遣部隊の日報が陸上自衛隊に電子データで1月まで保管されていたことが明らかになった。驚くことはそれだけでない。

陸自は公表を検討したものの、防衛省統合幕僚監部の幹部が非公表を指示していた。先に統幕内で廃棄済みのデータが見つかり大問題になった経緯があり、「国会を乗り切るため、今さら出せない」との判断が働いたらしい。

これでは不都合な情報を国民に伏せた旧日本軍のようだ。防衛省の隠蔽(いんぺい)体質が厳しく問われる。制服組トップの統合幕僚長が「隠蔽は組織にとって致命的な打撃になる」との認識を示したのは当然だ。

首相は徹底的な調査を指示し、防衛相は特別防衛監察の実施に踏み切った。到底、一部の判断ミスでは済まされない。指揮監督者の責任とも無縁ではない。歯車の錆は組織全体をむしばむ。
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