再生したい

中日春秋 3/18

 「われわれは自分自身を再生したいと欲している。だから、権利の宣言が何としても必要なのだ」。これは、フランス革命期に活躍したラボー・サン・テチエンヌの言葉だ。

一七八九年の夏、フランスの国民議会では「人権宣言」をめぐり激論が戦わされていた。名古屋大の石井三記(みつき)法学部長は「サン・テチエンヌの言葉は、当時の人々の人権への渇望を象徴している」と語る。

封建制の下で抑圧され、貧苦にさいなまれ続けた人々を解き放ち、自由にするには、どうすればいいのか。「再生」という言葉には、人間の尊厳を取り戻そうという固い決意が込められているのだ。

きょう公開される名匠ケン・ローチ監督の新作『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、現代社会で自らの尊厳を取り戻そうとあがく人々の姿を描いた映画だ。四十年間、職人として働き、まじめに納税し続けたダニエルが心臓発作で働けなくなる。働きたくとも働けないのに、効率一辺倒の役所の窓口で、コンピューターが使えぬ彼は「負け組」扱いを受け、貧苦の坂を転がり落ちていく。

競争ばかり煽(あお)られ、貧富の格差が拡大されるがままの社会で、「再生したい」という思いが、いかにないがしろにされているか。

自らの尊厳を守るため、ダニエルは役所の壁に落書きをする。「わたし、ダニエル・ブレイクは…」。それは、二十一世紀の人権宣言だ。
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