なごり雪

あぶくま抄 3/17

 3月も半ばの15日朝、県内各地に雪が積もった。福島市では昼すぎには解けてしまった。テレビのニュースは「なごり雪」が広範囲に降ったことを伝えた。

 フォークグループ「かぐや姫」の伊勢正三さんが作詞・作曲し、イルカさんらが歌った別れの曲の題名でもある。春になってから冬のなごりに降る雪の意味だが、曲が発表された昭和49年まで、日本語にそんな言葉はなかったと聞いたことがある。確かに広辞苑[こうじえん]には載っていない。代わりに「名残の雪」という表現がある。

 「の」を抜いただけなのに「日本語を乱している」と随分批判されたという。だが歌い継がれるうちに、なごり雪は誰もが知る一般的な言葉になった。平成25年、日本気象協会が募集した「新しい季節の言葉36選」にも選ばれた。伊勢さんが批判を聞き入れ「名残の雪」や「なごりの雪」に題名や歌詞を変えていたら、ファンの方が受け入れられなかっただろう。

 今年も別れの季節が巡ってきた。卒業、進学、就職、転勤…。慣れ親しみつつあった土地を離れ、古里に帰還する避難者もいる。思い出がはかなく消えていかないように、国民的名曲の力を借りてみるのもいい。

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