渡瀬恒彦さん

大自在 3/17

 テレビの推理ドラマなどのシリーズが長続きするのは主役の役柄と、それを演じる俳優の個性が融合し、絶妙の味わいを醸し出すからではないかと思う。事件の内容や現場は毎回違っていてもおなじみの警部や探偵が人情味のあるやりとりで謎解きしていく。

 もちろん最後は鮮やかに解決する。身近なヒーローと受け止めた人もいよう。「十津川警部」や「世直し公務員 ザ・公証人」、「おみやさん」などのドラマシリーズで主役を務めてきた渡瀬恒彦さんもそんな俳優ではなかったか。

 個人的には青春時代からスター扱いされてきた俳優と違い、サラリーマン生活を経て芸能界入りしたところに好感を持っていた。役者として演技力を磨いた作品の一つに荒々しいやくざの抗争を描いた実録路線「仁義なき戦い」がある。

 原爆の被害を受けた広島を舞台に、血の気の多い若者たちが陰謀と裏切りの抗争に身を投じていく。主役は菅原文太さんで、脇を固めた一人が渡瀬さんだった。不器用だが、男くささを漂わせる演技が光った。「南極物語」では高倉健さんの相棒役を務めたことも印象にある。

 高倉さんや菅原さんら戦後の日本映画の代表的なスターを支える役を演じる一方、人気ドラマでベテラン俳優らを相手に存在感を発揮してきた渡瀬さんが亡くなった。72歳だった。

 今後も“事件”を追ってバリバリ活躍してほしいと思っていただけに残念でならない。今年1月には「仁義なき戦い」で共演し、年齢の近い二枚目スター松方弘樹さんが亡くなったばかりだ。また一人魅力的な俳優が逝った。
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