いちばんベター

水や空 3/16

文法的に正しいか、と言われれば、正しくはないだろう。職場の会議などで飛び出す「いちばんベター」という言い回しにはそもそも矛盾があるのだが、何となく含意が伝わるから不思議である。

ベストではないけれど、現状ではこれが「よりまし」で、取るべき方法なんです...そんなニュアンスが漂う。首相と日本の労使トップが先ごろ合意した内容も「いちばんベター」かどうか。業務が忙しい時期の残業の上限を「月100時間未満」にするという。

月100時間は、労災と認定されるかどうかの目安であり「過労死ライン」とされる。それをかろうじて割り込むことで、労使に折り合いをつけた。

過労で命を落とす、自ら命を絶つ-悲しくもそんな形で身内を亡くした人から見れば、「ラインすれすれ」の上限が用をなすとは受け取るまい。裁定した安倍晋三首相が「労働基準法70年で歴史的な大改革」と胸を張ったにせよ。

ベストとはいえないが、ようやく「いちばんベター」に向かい始めた-労基法誕生から70年にして、日本はそんな段階にあるのだろう。この先も見直しを怠ってはなるまい。

30回目となるサラリーマン川柳の上位作にある。〈効率化 提案するため 日々残業〉。ベターを求めて堂々巡り...どことなく共感してしまう、ああ日本人の姿である。
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