エセルの怒り

卓上四季 3/14

いつも怒っているわけにはいかないけれど、何も感じなくなる方が怖い。フランスの元外交官ステファン・エセルさんの著書「怒れ!憤れ!」(日経BP社)を読むとそう感じる。

<怒りは貴重。一番よくないのは無関心である。どうせ自分には何もできない、自分の手に負えないという姿勢でいたら、人間を人間たらしめている大切なものを失う>。

エセルさんは先の大戦で、レジスタンスとしてナチスと戦い、強制収容所にも送られた。心がくじけそうになったときの支えは、ただ怒りの感情だったとか。戦後、国連の世界人権宣言の起草にも関わった。

隣の国を見て、エセルさんの言葉を思い出した。韓国の大統領が憲政史上初めて罷免された。大統領の親友は国政に介入し、富を得たとされる。経済悪化に苦しむ庶民には、政治の私物化と映った。それが怒りを買ったに違いない。

日本はどうか。共同通信の世論調査によれば、森友学園の国有地売買で政府の説明が不十分と思う人は9割近くに上る。国会で関係者に証言させないのは後ろめたい事情があるからだ、と考える人が多いのでは。静かな怒りが広がっているように見える。

エセルさんは言う。<怒る理由は、単なる感情よりも自ら関わろうとする意志から生まれる>。関心を持って国会中継を見る。選挙で意思を示す。ちょっとした行動が怒りを持続するすべになるかもしれない。
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