一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ

天鐘(3月14日)

 「朕惟(おも)フニ」で始まる教育勅語。明治23年に発布され、戦後の昭和23年に失効が決議されるまで修身教育の基本規範として崇め、奉読されてきた。だが、何とその神聖なる勅語の文法に重大な誤りがあったという。

「森友学園」問題で「朕惟フニ」と勅語を朗々と暗誦する園児が話題になった。とても内容を理解しているとは思えないが、世代は違っても戦後教育を受けた身として何も知らないでは彼らの手前恥ずかしい。

そこで調べたら山縣有朋内閣の知恵袋、井上毅(こわし)法制局長官と天皇側近で儒学者の元田永孚(もとだ・ながざね)が最終案を作成。親孝行や学問の大切さを、遵法精神など12の徳目を教えている。

戦時下の国家総動員法を正当化する〝条理〟として利用された。本文の「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ」は戦時には真心を捧げて国を守る気概を発揮―などの意。仮定条件を導くなら「アレバ」では誤りだと。

正解は未然形のアラに接続助詞のバで「アラバ」。まず初の国語辞典『言海』を編纂した国語学者の大槻文彦が気づいて羽織袴で文部省に赴き、訂正を求めたが断られた。起草した井上は無学を深く恥じたという。

評論家の大宅壮一も大正期の中学時代、誤用を指摘したら「とやかく言うな」と逆に教師に諫(いさ)められたとか。集団を一つ方向に率いるばかりが教育ではない。毅然と持論を掲げ、誤りを指摘する勇気を教えるのも教育ではなかったか―。

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