大丈夫だよ、絶対

中日春秋 3/11

六年前のきょう、福島市の小学四年生・吾妻直樹君は、自宅にいた。居間のピアノが数十センチ動くほどの揺れの中で、お母さんは直樹君の顔がさっと青ざめていくのを見て、抱き締めて言った。「大丈夫だよ、絶対」

その年の夏休み、直樹君は詩を書いた。<強い地震の中/「大丈夫だよ、絶対」/とお母さんが言った。/その言葉で少し落ちついた…/まるでま法の言葉だった…/停電で暗い中/お母さんは笑っていた/いつも/「大丈夫強いんだから」/と言っていた。/ま法の言葉を連発した…>

原発事故が起きて、被ばくを避けるために、春休みはずっと家の中で過ごした。宮城県にいる親戚の死を聞いて、直樹君は「命が簡単になくなっちゃう。でも自分は今、生きている」と思ったそうだ

詩は続く。<震災から一ヶ月後/お父さんが東京から帰って来た/お母さんは泣いた/お父さんの顔を見て/涙を流した/頑張った涙/お母さんが/頑張るま法から解放された涙/ま法つかいのお母さんは/この時から/震災前のお母さんに戻った>

そうして、こう結んだ。<今度は/ぼくがお母さんを守る/ま法つかいにならなくても/強くなって/ぼくはぼくのままで/お母さん/そして家族を守る>

直樹君は、「医療や福祉に役立つ研究をしたい」と語る高校一年生になった。身長はあれから、三十センチも伸びたという。
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