海は燃えている

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中日春秋 3/8

二百五十人の難民が乗るという船からイタリアの沿岸警備隊に悲痛な救助要請が届く。「助けてくれ」「現在位置を」「神様…」「現在位置を」「助けてくれ、頼む」「現在位置は?…聞こえますか…もしもし…応答どうぞ」。それきり応答は、ない。

いま、上映中の『海は燃えている』は、イタリア最南端の島ランペドゥーサの人々の静かな暮らしぶりと、その沖でくり広げられる難民救助の現実を、見事なコントラストで写し撮ったドキュメンタリー映画だ。

島民にとっては豊かな海の幸をもたらす海が、難民には数千数万の命を奪う場となっている。監督のジャンフランコ・ロージさんが「この映画は答えよりも質問を生む映画」と言っている通り、この作品はずんと重い疑問符を心に残す。

日本にとっては「遠い国の出来事」にみえる難民問題だが、この列島にも目をそむけられない現実が、潜んでいるようだ。難民申請者を「福島での除染作業に従事すれば、滞在許可が延長される」とだまし、働かせていた業者がいることが明らかになった

わが国への難民申請者は昨年は一万一千人近くいたのに、認められたのは、二十八人。祖国に帰れず、難民とも認定されぬ。そういう人々が食い物にされていたのだ。

難民問題に、わが国はどう向き合うのか。「現在位置は?」と立ち位置を問われているのは私たちかもしれぬ。
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