「ね」と読むか「おと」と読むか



 この漢字の音読みは「オン」で、訓読みには「おと」と「ね」の二つがある。「オン」と読むときには言語音のことを表すのが一般的だ。問題は訓読みの場合。「ね」と読むか「おと」と読むかで印象が異なる。

 恩田陸の『夜のピクニック』を読んでいて、「笛の音」という表現が出てきた。この句だけを取り出すと2通りに読める。『大辞林(第2版)』の「ね(音)」の項に2番目の意味として「物の発する快い響き」とあり、「鐘の音」「笛の音」「楽の音」が例示してある。「楽の音」は間違いなく「ね」と読むが、鐘や笛は2通りに読める。鐘はおくとして、笛は、どんな種類かによって、「ね」か「おと」かが決まる。日本古来の横笛や楽器の笛なら「ね」だろうし、合図に使うホイッスルなら「おと」だろう。

 『夜のピクニック』を読んでいて、一瞬、どっちだろうと迷った。原文は鍛練歩行祭の休憩を告げるもので、「笛の音が(丘の)斜面に鳴り響いた」とある。これは合図のためのホイッスルだと思われるから、「おと」だろう。さらに、「鳴り響く」のも「おと」のほうがふさわしい。「ね」なら「鳴り渡る」とか「響き渡る」といった音色にかかわる表現になるだろう。
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