さらばムッシュ

天鐘 3/5

 ♪とぼけた顔してバンバンバン―。グループサウンズ時代のワンフレーズが、まさにこの人のことのように聞こえる。ザ・スパイダースのメンバーだったムッシュかまやつさん。

トレードマークのロングヘアと、力の抜けたあの笑顔。独特な風貌で時代を震わせる曲を幾つも世に放ってきた。『フリフリ』『バンバンバン』『どうにかなるさ』。50代以上なら、そのリズムは忘れられまい。

♪アー夢よ、良き友よ―。グループの中では、どこかコミカルな役回りの人だった。ステージでは、堺正章さんや井上順さんらの“いじられ役”に徹したせいか。それでも音楽を語れば、表情は哲学者になった。

学生時代、『我が良き友よ』をバイブルにしていた友人がたくさんいた。〈男らしいはやさしいことだと言ってくれ〉。人生も説く歌詞は、かまやつさんのあの飾らぬ歌声だからこそ胸に染みたのかもしれない。

♪あの時君は若かった―。あだ名は「遅刻魔」。スパイダースのデビュー曲『フリフリ』を自分で作りながらジャケット撮影に遅刻し、ただ一人写っていないというのは有名な話。どこまでも憎めない人である。

人間、好きなことがあれば、どうにかなるさ。語らずとも、そんなメッセージがこの人の背中からはにじみ出ているようだ。好きな音楽を最後まで抱きしめながら、フワリと旅立った。さらばムッシュ。夕陽も、風も泣いている。


大弦小弦 3/5

「彼はロック歌手ですか、フォーク歌手ですか」と県内バンドメンバーの1人に聞くと、困った顔をした。すぐには答えられないくらい幅広いジャンルで活動したということだろう。

78歳で亡くなったミュージシャンのムッシュかまやつ(本名釜萢弘=かまやつひろし)さん。父親は日本のジャズ界の草分けティーブ釜萢さん。音楽のある家庭環境で育った。

1950年代半ば、高校時代にカントリー&ウエスタンのバンドを結成し、米軍キャンプで演奏、ロックにも触れた。60年代は人気のグループサウンズ「スパイダース」のメンバー、解散後の70年代にソロで「我が良き友よ」を大ヒットさせた。

「心が押しつぶされそう」(堺正章さん)「風のように生きるおしゃれを、いつも教えてくれました」(松任谷由実さん)「素晴らしい兄貴」(井上順さん)などの惜しむ声。

最近も10代や20代の若者とファンクバンドを結成するなど、音楽への情熱はとどまるところを知らなかった。いとこで歌手の森山良子さんは「病院でもギターを弾いて歌っていた」と話している。

ジャンルを超え、世代を超え、時代を超えて自然体で好きな音楽を続けたかまやつさん。「音楽をやっているということが、毎日生きているって感じなんですね」とも語っている。まさにその言葉を体現した人生だった。

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どうにかなるさ

歌:かまやつひろし 作詞:山上路夫 作曲:かまやつひろし

今夜の夜汽車で 旅立つ俺だよ
あてなどないけど どうにかなるさ
あり金はたいて 切符を買ったよ
これからどうしよう どうにかなるさ
見なれた街の明り 行くなと呼ぶ
けれども 同じ 暮しに疲れて
どこかに行きたい どうにかなるさ

仕事もなれたし 街にもなれたよ
それでも行くのか どうにかなるさ
一年住んでりゃ 未練ものこるよ
バカだぜおいらは どうにかなるさ
愛してくれた人も 一人いたよ
俺など忘れて 幸福つかめよ
一人でおれなら どうにかなるさ

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