死に至る病

中日春秋 3/4

 エイズはかつて、「死に至る病」として恐れられた。だが、二十年ほど前に、三、四種類の抗ウイルス薬を組み合わせ服用する治療法が確立され、完治はせずとも一生つき合っていける「慢性病」となった。ただし、薬を買うことができれば…だ

アフリカでのエイズ患者支援にも取り組む「国境なき医師団日本」によると、エイズ感染者に一年間に投与する薬は当初、百万円以上もした。

しかし、治療革命に次いで薬価革命が起きた。インドのジェネリック医薬品メーカーが競って抗ウイルス薬をつくり始めたために値段がぐっと下がり、年一万円でまかなえるようになった。一人を救うお金で、百人が救えるようになったわけだ。

だが今、医療支援の現場に懸念が広がっている。頼みの綱のジェネリック医薬品が、日本や中国、インドなど各国政府が交渉を進めている東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ))で、厳しく規制されそうなのだ。

そうなれば、治療革命の成果を支援に生かしにくくなる。だから国境なき医師団日本などは「医薬品の普及を損なう条項は何百万人もの命を脅かす」と警鐘を鳴らし、「日本政府は、命を優先する流れを主導すべきだ」と求めている。

貧しいが故に「死に至る病」の恐怖から逃げられぬ。そういう人々の姿が目に入らぬのだとしたら、それは政治にとっての「死に至る病」ではないか。
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