お水送り

20170303022559a54.jpeg


越山若水 3/2

奈良・東大寺の「お水取り」といえば、春を告げる伝統の行事である。そこで重要な役割を担う「お水送り」がきょう小浜市で行われ、お香水が遠敷川に注がれる。

その聖水が10日かけて東大寺二月堂の「若狭井」に届くこと、白装束の僧侶が吹くホラ貝や闇夜を照らす松明(たいまつ)が幻想的なことは、県民ならばよくご存じだろう。

ただ本元のお水取りとなると、全国から観光客が押し寄せる超有名な催し。とりわけ12日夜の籠(かご)松明から翌日未明のお水取りは大混雑し、見学するのもひと苦労だ。

河合敦さんが書いた「祭りの日本史」(洋泉社)で、改めて由緒正しさと人気の理由が分かった。まず単なるお祭りイベントではない。僧侶たちが巨大松明を持って走り回る、14日に及ぶ荒行である。

さらに天平時代から幾多の戦乱をくぐり抜け、1260年以上一度も途絶えたことがない。平家の焼き打ちなどで東大寺は何度か焼失したが、二月堂は奇跡的に難を逃れた。

旧暦2月に行うために「修二(しゅに)会(え)」とも呼ぶが、正式名称は「十一面悔過(けか)」。人間が犯してしまう罪を僧侶が代わりに懺悔(ざんげ)し、幸福や平和を願うという。

「水とりや氷の僧の沓(くつ)のおと」。江戸時代には俳聖、松尾芭蕉も火の粉飛び散る壮観な行事を目にしたようだ。ゆかり深い若狭の地を知る者として、荘厳でロマンに満ちた今夜のお水送りをしっかり見届けたい。


20170303022312274.jpeg
関連記事