ナイフ

201703030229314f1.jpeg


天鐘 3/3

 小紙の地域情報面に、幼稚園児が果物ナイフでリンゴの皮をむく様子が載った。つい、折りたたみ式のナイフが宝物だった小学生の頃を思い出してしまった。ナイフがあれば、何でも作れると思えたから不思議だ。

果物の皮むきはもちろんだが、ナイフの真骨頂は木製のオモチャを作ることではないだろうか。戦艦の船体から戦闘機の胴体まで丁寧に形を整えた。今の子どもたちは刃物に接する機会が少なくなってしまった。

一から始め自力で完成させる。既製品にない達成感が得られた。削り方によって、全く別物にできる愉快さもある。それも自分のナイフがあっての話。自分の手になじんだ分だけ、思い通りに使えるようになる。

さまざまなオモチャが子どもの周囲にあふれている今から見れば、粗末な仕上がりに違いない。だが、物を作る力を養うのに大きく貢献したと思う。何の変哲もない1本の木から、形を自由に彫り出すのだから。

手入れも決して怠らなかった。大切なナイフがさびてしまっては切れ味が悪くなる。砥石(といし)の使い方を教えてもらい、刃の状態を見ながら研いだものだ。時代劇の一場面のように、研ぎ具合を満足して眺めていた。

物作りを通して、自分の努力や工夫を凝らした部分をそれとなく自慢できた。仲間で作品を持ち寄っては、良しあしを批評し合うのも楽しみの一つだった。ナイフは創造するための道具である。
関連記事