反省させると犯罪者になります

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反省させると犯罪者になります(新潮新書)

学校教育の現場では,子どもたちによく反省をさせます。
例えば,「終わりの会」などで,
「〇〇君が,掃除をサボっていました。」
「〇〇君,本当ですか?」
「はい。」
「〇〇君,反省してください。」
「これからは,掃除をサボらないようにします。」
のような,やり取りがかなりあるのです。

また,中学校や高校では,問題行動を起こした子どもに,「反省文」を書かせることもよくあります。そして,その「反省文」の内容を問題行動に対する罪の意識や,これから行動を改めていくことの担保とするのです。

著者である岡本茂樹氏は,そのような「反省」を徹底的に批判します。
というのも,岡本氏は,受刑者を対象とした更生カウンセリングに長年関わっておられて,犯罪者の心理をよく理解されているからです。その心理のほとんどが,「反省」や「罪の意識」ではなく,被害者への否定的感情であることが多いのです。ですから,短絡的に「反省」する犯罪者は,上辺だけの反省をしていると言うのです。

さらに,そのような「反省」を繰り返している人は,「反省」のテクニックばかり上達し,問題行動や犯罪の根底にある,加害者の心理を抑圧してしまうといいます。そして,その抑圧された心理,感情が,いずれどこかで爆発するというのです。

この「いずれ」というのが意味深で,その反省をした人だけでなく,その人が親になればその子に,その子が親になればまたその子にというように連鎖していき,どこかで犯罪者を出すというのです。これを「世代間連鎖」と呼んでいます。

長年受刑者を相手にされている方の意見だけに,説得力があります。また,確かに,学校教育現場では,「反省」を子どもたちにさせる指導が横行しています。ですから,氏の意見は傾聴すべきところもあると思います。

一方,私の教育感では,上で紹介したような終わりの会での「反省」会は,これまでやらないようにしてきました。また,けんかのような問題があったときも,できるだけ,双方の話を聴くようにしてきました。というのも,先に暴力をふるった方にも,それなりの理由があるだろうし,ふるわれた方にも理由があるだろうという大前提があったからです。とにもかくにも暴力をふるった方が悪いという指導はしてきませんでした。

この,「理由を聞く」というのが大事だというのは,この著作の中にも出てきます。
つまり,「反省」をさせるのではなく,そのときの心情や理由を語らせるということが大事だと書いてあるのです。

ただ,この著作には,首を傾げるところもあります。それは,上述の「世代間連鎖」です。確かに,人が親になるとき,自分が受けてきた家庭教育しか知らないので,それを再生するというのも分かります。しかし,逆に,その教育に批判的であることで,つまり反面教師的に,そうでない家庭教育をするようになるということも考えられるのです。そうなれば,「世代間連鎖」は途切れます。

また,「親学」のようなものも必要で,社会的には,かなり地域ごとに普及しているようにも思います。つまり,単に自分が受けた家庭教育だけでなく,よりよい家庭の教育やしつけを学ぶ機会も増えてきているということなのです。

それでも,ここに書かれていることを真摯に受け止め,生徒指導や家庭教育に留意するということは大切なことではないかと痛感した,そんな著作でした。



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