犯罪は予測できる

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小宮信夫「犯罪は予測できる」


日本の犯罪捜査や犯罪予防について,これまでの常識を完全に覆すものでした。
しかし,あまり取り上げられません。

その要旨は,犯罪は犯罪者の家庭環境や生育歴などとは関係なく,場所で起こるのだと言うものでした。
日本では,殺人事件などの犯罪が起こると,その犯罪者の心理学的分析や,家庭環境や生育歴の探求に明け暮れます。

これを著者は,「犯罪原因論」と呼びます。
しかし,これでは,本当に犯罪を防ぐことはできません。なぜなら,そのような心理,家庭環境,生育歴を外見からは,読み取ることができないからです。

それよりは,どこで犯罪が起こったのかということに着目し,「犯罪継起論」を提唱していました。
本書は,その発展の著書となっています。


犯罪は予測できる (新潮新書)

今回の著書では,それを「景色」と呼び,それを解読する力が犯罪を予防する力となると述べています。つまり,犯罪が起こる場所を日頃から見つけることができれば,犯罪を防止できるというのです。そして,「景色解読力」とラベリングすることで,読者には具体的に理解しやすい概念として提示されていることが分かります。

では,どのような景色が犯罪と関連しているのでしょうか。

これは,前著とほぼ同じです。
「だれもが入れる(入りやすい)」
「だれからも見られない」
という場所です。そこで犯罪が起こっているのです。

そして,これを前提に,日本では防犯として実践されていることをことごとく批判します。

例えば,防犯ブザーです。
ここでは,人間の恐怖と行動の関係について研究をもとに述べ,思考や行動より恐怖の方が先に来るから,防犯ブザーをならすことができないと述べています。

また,「いかのおすし」の合い言葉です。これは,「ついていかない」 「車にのらない」「おお声で叫ぶ」「すぐにげる」「しらせる」のそれぞれをつないだ標語です。しかし,この意味をしらない子どもたちが圧倒的であることをデータをもとに批判します。

さらに,「不審者」です。この呼び方は,日本固有のものだと言います。海外で,このような呼びかたをする国は無いそうです。なぜなら,この「不審者」という概念は,「人を信じる」という概念と矛盾するからです。ですから,海外では,このような矛盾する概念を教育現場に導入しないのです。

しかし,日本では,当たり前のように導入しています。
もっとおもしろいのは,本当に危険な「不審者」は,サングラスをかけてマスクをしているということはないそうです。

また,「不審者」は決して「知らない人」でもないのです。計画的な犯人は,十分知った人となってから犯罪を起こすのです。

まだまだ,これまで日本では常識とされていたことが,世界の非常識となっていることがあります。あるいは,防犯上の非常識となっています。

子どもたちの防犯意識を育てるためにも,今一度,小宮氏の考え方を受け入れ,考察し,実践すべきだと,改めて痛感しました。



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