2017年10月12日の記事 (1/1)

日本版GPS

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滴一滴 10/12

 「6センチ」はテニスボールの直径より小さい。位置情報の誤差がその程度まで縮むというから、大きな進歩である。日本版GPS(衛星利用測位システム)を目指す準天頂衛星「みちびき」4号機がおととい、打ち上げに成功した。

GPSはカーナビやスマートフォンに使われ、米国の衛星電波を受信する。だが誤差は数メートルはあり、山や高いビルがあると精度が落ちる。みちびきはGPSを補い、既に打ち上げた3基との4基体制で日本の真上を24時間周回するという。

中でも期待されるのが自動運転への活用だ。実用化の中核技術としては周囲を把握するセンサー機能とともに、正確な位置情報が欠かせない。6センチの誤差なら、人の感覚より優秀という声もあるだろう。

熱い視線は高齢化が深刻な農業からも送られる。無人農機で耕運や田植えができれば、作業負担が軽減し、人手不足も解消する。夜間の作業も可能だ。熟練農家はその分、経験に基づく知恵や技が生かせる。

導入は大規模経営などに限られようが、新規就農者の増加につながるとの期待もある。こうした無人運転の開発は、人手不足という同じ悩みを抱え、危険作業を伴う土木・建設でも急ピッチだそうだ。

人間の持つ優れた技に、最先端技術を組み合わせる。働き方改革が叫ばれる時代に、そんな新しい「協業」なら歓迎である。

懐かしい長崎

水や空 10/12

 女性がつぶやく。〈子供っていうのはこういうものなのよ。作り話をしているうちに、空想と現実がごっちゃになっちゃうのね〉。ノーベル文学賞に決まった長崎市生まれの英国人作家、カズオ・イシグロさんの長編第1作「遠い山なみの光」(小野寺健訳)にある。

長崎を離れ、英国で生きる主人公の女性の物語である。原爆が落とされて間もない頃の長崎の回想を軸に進む。作中に〈記憶というのは、たしかに当てにならないものだ〉という独白もある。

作り話であり、記憶は当てにならないと、ご自身も意識しているはずなのに、この描写の巧みさといったら。ロープウエーに乗ったときの回想シーン。〈稲佐行きは大旅行のような気がしたのだった。何日も前から楽しみにしていたことを、いまだにおぼえている〉。

浜屋デパートの食堂で夕食を済ませた、その後の回想。〈横丁をぶらぶら歩いて、のんびりと市電の停留所へ...〉。どこか懐かしい長崎の街の風景がふっと立ち現れる。

長崎にいたのは5歳まで。記憶が薄らぐ長崎を、心の原風景の長崎を、筆でつなぎ留めているようでもある。

小説全8作の大幅増刷が決まったと昨日の本紙にあった。多くの人の目の前に「懐かしい長崎」が現れることだろう。イシグロさんへの祝辞とともに感謝の念もじわりと湧く。


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浜屋

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基礎研究

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大弦小弦 10/12

「日本の大学の研究状況は危機的で、このままいくと10年後、20年後にはノーベル賞受賞者が出なくなる」。ノーベル医学・生理学賞の受賞者、大隅良典さんが昨年、受賞の喜びとともに訴えたのは、日本の研究環境の悪化だった

日本人は今年、3年続いた自然科学分野でのノーベル賞受賞を逃した。科学者たちの誇らしげな笑顔を見ることができなかったのは寂しい。

日本の基礎研究力が衰退しているとの指摘は多い。英国の科学誌ネイチャーは、発表される論文の減少などから「日本の科学技術はここ10年で水準が低下している」と分析。このままでは「科学先進国としての座を追われる」と警鐘を鳴らしている。

国立大学の運営交付金削減など基礎研究費の不足は深刻で、大学側が長期雇用を短期雇用に切り替えた40歳以下の研究者の数は、2倍以上に膨れ上がったという。

一方で、大学などを対象にした軍事応用も可能な基礎研究に助成する防衛省の予算は、2016年度の6億円から17年度は以後5年分で110億円と拡大の一途だ。

ノーベル賞はダイナマイトを発明したノーベルが平和と人類への貢献を願い、創設された賞。日本の科学者が軍事との距離を縮めつつあることを懸念するとともに、基礎研究力の低下を危惧する。ノーベル賞とは縁のない国になってしまわないか。

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ノーベル賞のうんちく・雑学

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベル氏の遺言に基づいて作られ、物理学賞・化学賞・医学生理学賞・文学賞・平和賞・経済学賞の6部門で構成されています。その遺言には、5つの分野で優れた研究をした人に賞をあげて欲しいと書かれており、第1回のノーベル賞授賞式は1901年です。経済学は、アルフレッド・ノーベル氏の遺言では賞の対象とされていませんでしたが、1969年にスウェーデン中央銀行の記念賞として加わりました。

そのノーベル賞の選び方ですが、各委員会(スウェーデン科学アカデミー・スウェーデン・アカデミー・カロリンスカ研究所・ノルウェー・ノーベル委員会)が、世界中の研究者や過去の受賞者たち1千人以上に推薦状を求めます。そして、返信された中から、専門家が研究業績や論文を徹底的に調べて、委員会で10人ほどに絞り込みます。そして、最終的に数人に絞り、最後は多数決で受賞者が決められます。ちなみに、1千人以上に推薦状を求めても、返信されるのは10~15%くらいのようです。

ノーベル賞受賞者を選考する基準としては、明確な基準がある訳ではなく「注目されている研究であるか?」「受賞候補者の研究で一番重要な点は何か?」などがポイントとなっているようです。あと、過去の受賞者からの推薦は影響力が大きいと言われています。その際の調査および選考過程の記録などは、全て保管され50年間は秘密にされます。

授賞式ですが、毎年アルフレッド・ノーベル氏の命日である12月10日にスウェーデンで行われますが、平和賞だけノルウェーで行われます。ノーベル賞の各賞の賞金は、スウェーデンの通貨である1千万クローナ(約1億2千万円)で、受賞が複数いる場合は受賞者で分けることになっています。例えば、受賞者が3人いれば、1人約4千万円の賞金になります。なお、授賞式のあとは、晩餐会・舞踏会・記念講演などがあります。あと、ノーベル博物館にあるカフェのイスの裏側にサインをするのが恒例となっています。

ノーベル賞は、世界中が注目する賞のひとつですが、その名誉ある賞でも辞退した人が過去に2人います。ひとりはフランスのジャン=ポール・シャルル・エマール・サルトル氏で、もう一人はベトナムのレ・ドゥク・ト氏です。サルトルは、「ノーベル文学賞は、西側の文化を意図的に擁護し東西対立を推し進めている」との考えからの辞退で、レ・ドゥク・ト氏は「自国にまだ平和が訪れていない」との考えからの辞退でした。

なお、ロシアの詩人・小説家であるボリス・パステルナーク氏は、連続5回(1946~1950年)もノーベル文学賞候補としてノミネートされたことが判明しており、1958年には文学賞を受賞しましたが、ソビエト当局の圧力によって辞退を余儀なくされました。しかし、ノーベル賞委員会が一方的に賞を贈って、のちに遺族がその賞を受け取っています。


ノーベル賞歴代受賞者(日本人)

2016年

大隅良典(おおすみ よしのり)
受賞年:2016年(平成28年)
受賞部門:ノーベル医学生理学賞
受賞理由:細胞が不要なたんぱく質などを分解する
仕組み「オートファジー」の解明



2015年

大村智(おおむら さとし)
受賞年:2015年(平成27年)
受賞部門:ノーベル医学生理学賞
受賞理由:寄生虫によって起こる、
感染症の治療法の発見
(イベルメクチンの元になる抗生物質の発見など)

梶田隆章(かじた たかあき)
受賞年:2015年(平成27年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:素粒子のひとつニュートリノに
質量があることを観測によって証明
(観測による証明は世界初)



2014年

赤崎勇(あかさき いさむ)
受賞年:2014年(平成26年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:高輝度で省電力の白色光源を可能にした
青色発光ダイオードの発明

天野浩(あまの ひろし)
受賞年:2014年(平成26年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:高輝度で省電力の白色光源を可能にした
青色発光ダイオードの発明

中村修二(なかむら しゅうじ)
受賞年:2014年(平成26年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:高輝度で省電力の白色光源を可能にした
青色発光ダイオードの発明
備考:国籍はUSA



2012年

山中伸弥(やまなか しんや)
受賞年:2012年(平成24年)
受賞部門:ノーベル医学生理学賞
受賞理由:成熟細胞の初期化を可能にし、
様々な細胞に成長できる能力を持つiPS細胞の
作製に成功した



2010年

鈴木章(すずき あきら)
受賞年:2010年(平成22年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:パラジウム触媒を用いた、
クロスカップリングの開発

根岸英一(ねぎし えいいち)
受賞年:2010年(平成22年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:パラジウム触媒を用いた、
クロスカップリングの開発



2008年

小林誠(こばやし まこと)
受賞年:2008年(平成20年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:クォークが自然界に少なくとも
三世代以上ある事を予言する、
CP対称性の破れの起源の発見
(小林・益川理論)

下村脩(しもむら おさむ)
受賞年:2008年(平成20年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発

南部陽一郎(なんぶ よういちろう)●
受賞年:2008年(平成20年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:素粒子物理学における、
自発的対称性の破れの発見
備考:国籍はUSA

益川敏英(ますかわ としひで)
受賞年:2008年(平成20年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:クォークが自然界に少なくとも
三世代以上ある事を予言する、
CP対称性の破れの起源の発見
(小林・益川理論)



2002年

小柴昌俊(こしば まさとし)
受賞年:2002年(平成14年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:超新星からの宇宙ニュートリノの検出

田中耕一(たなか こういち)
受賞年:2002年(平成14年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:ソフトレーザーによる質量分析技術の開発で
生体高分子の同定および構造解析を可能にした



2001年

野依良治(のより りょうじ)
受賞年:2001年(平成13年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:キラル触媒による不斉反応の研究



2000年

白川英樹(しらかわ ひでき)
受賞年:2000年(平成12年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:導電性高分子の発見と発展



1994年

大江健三郎(おおえ けんざぶろう)
受賞年:1994年(平成6年)
受賞部門:ノーベル文学賞
受賞理由:詩的な言語を用いて、
現実と神話が混交する世界を創造し、
窮地にある現代人の姿を、
見る者を当惑させるようなビジョンに描いた



1987年

利根川進(とねがわ すすむ)
受賞年:1987年(昭和62年)
受賞部門:ノーベル医学生理学賞
受賞理由:多様な抗体を生成する遺伝的原理の解明



1981年

福井謙一(ふくい けんいち)●
受賞年:1981年(昭和56年)
受賞部門:ノーベル化学賞
受賞理由:フロンティア軌道理論によって、
分子の反応性が軌道の密度・位相に
支配されていることを証明



1974年

佐藤栄作(さとう えいさく)●
受賞年:1974年(昭和49年)
受賞部門:ノーベル平和賞
受賞理由:非核三原則の提唱
(核兵器をもたず、つくらず、もちこませず)



1973年

江崎玲於奈(えざき れおな)
受賞年:1973年(昭和48年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:トランジスタの固体のみでトンネル効果を実証



1968年

川端康成(かわばた やすなり)●
受賞年:1968年(昭和43年)
受賞部門:文学賞
受賞理由:非常に繊細で卓越した叙述表現



1965年

朝永振一郎(ともなが しんいちろう)●
受賞年:1965年(昭和40年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:量子電磁力学の発展に貢献



1949年

湯川秀樹(ゆかわ ひでき)●
受賞年:1949年(昭和24年)
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:中間子の存在を理論的に予言


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ポスターへ 文科省


いいかげん太

中日春秋 10/12

 「野暮助(やぼすけ)」「呑兵衛(のんべえ)」「骨川筋右衛門(ほねかわすじえもん)」。いずれも擬人名と分類される。由来となる特定人物が存在するわけではない。人の性格などを人の名のように呼ぶ表現方法。古くからある一種のシャレである。

もの堅く、やや融通の利かぬ人を指す「石部金吉(いしべきんきち)」。これも有名な擬人名である。カチンコチンのお人が浮かぶが、それをさらに強調した言い方が「石部金吉金兜(かなかぶと)」。堅い上に金属製の兜とは、真面目さの重装備である。

「石部金吉」が聞けば、肩を落とし、自分の兜がその会社の金属製材ではないことを確認したくなるだろう。神戸製鋼の検査データの改ざん問題である。

十年近くも強度の足らぬアルミや銅製品などを適合の範囲内であるかのように装っていたとは腹が立つというより、情けなさで力が抜ける。自動車、鉄道、ロケット…。同社供給の製材を使って生産した、あらゆる製品が怪しく見えてしまう。何ということをしてくれたか。

残念だが、神戸製鋼に限らぬ。東芝、日産自動車など日本を代表する製造業の不正がこのところ続く。真面目で誠実、製品に対する強いこだわり。「石部金吉」と言わぬまでも、きちんとした態度が日本のものづくりを支え、メード・イン・ジャパンの信頼と評判を築いてきたのではなかったか。

原点に戻りたい。日本製品や国民までが、「いいかげん太」の擬人名で呼ばれる前に。

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リンク

石部金吉(いしべきんきち)

律義者をいう。「堅蔵(かたぞう)」とも称す。石の如く金の如しとの義なり。江戸時代に「石部金吉、金兜(かなかぶと)、牛の襟皮に御老中の血判をして、岩の上にかしこまって、切腹というシロモノだ」という洒落語もありたり。「石部金吉郎」ともいえり。『三教色』に「堅屋の石都金吉郎も兜をぬいで降参」とあり。

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河北春秋 10/12

 日本の産業界をケヤキの木になぞらえてみる。大きな樹冠を多彩な「ものづくり」企業とすれば、下で支えて原料を送る根が鉄鋼や石油、化学など素材産業か。もしも根にトラブルが生じれば影響は計り知れない。それが現実に起きた。

大手鉄鋼メーカー神戸製鋼所が8日発表したデータ改ざん問題。アルミ製品や銅製品などで、強度などの性能データ書き換えを国内4工場で行っていた。顧客と取り決めた仕様を満たさぬ製品を不正な検査で、約10年出荷し続けたという。

会見した副社長は「担当者がついつい書き換え、やり出したら続いた」と組織ぐるみを認めたが、顧客は約200社も。確認されただけで自動車の車体、新幹線車両、航空機の機体やエンジン、H2Aロケットに至るまで行き渡っていた。

「日本の品質神話、崩壊か」とロイター通信が報じた。先月末、日産が完成前の車の無資格検査が常態化していたと公表したばかり。最近では三菱自動車の燃費不正、東洋ゴム工業の免震ゴムのデータ改ざんなど大企業の不正が次から次。

共通するのは、われわれユーザーの安全を二の次とする姿勢だ。神戸製鋼所は8月末に事実をつかみながら「説明は顧客優先」と、国から促されるまで発表を遅らせた。世界から信頼された「品質大国」はいずこ?