2017年09月16日の記事 (1/1)

性器の大発見

越山若水 9/16

「ほおーっ」と感心し、やがて笑いだす。そんな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」をまた日本人が受賞した。11年連続だから日本人のユーモアの才も決定的だ。

今回は、ある昆虫の性器に関する発見で生物学賞を受けた。「トリカヘチャタテ」という虫で、雌が凹、雄は凸という一般的な構造と逆なのを見つけたそうだ。

これぞ「性器の大発見」と言えば下品だがこの賞なら許されるだろう。もっとも、なぜ構造が逆になったのかを知ると、感心し笑っていたのがシュンとしてしまう。

この虫の雌は交尾のとき雄の体内に性器を入れ、精子のほかに栄養も受け取るのだという。餌の少ない洞窟に生息しているためらしいが、それが雄の喜びになるのかどうなのか。

性差を思う話題をもう一つ。日本に住む100歳以上のお年寄りの数が、過去最多の6万7824人に増えた。そのめでたさは言うまでもない。こだわりたいのは男女比である。

差は開く一方で、ついにほぼ1対9になった。もちろん女性が圧倒的に多い。どうしてこうも違うのかといえば、もともと出来が違うからだろう。

生物学者の福岡伸一さんが、そう書いている。「生物の基本は雌」で、男はできそこないだと。なのに威張る。図体(ずうたい)の大きさを誇り、攻撃的になる。おのれの弱さを知るからこそである。これは、あの北の三代目に向けて言っている。

ろう細工の料理見本

9/16

 先日すき焼きのことを書いた際に、引用した本にあった逸話。著者の大塚滋氏は食文化に詳しくユーモアに富んだ文章で「たべもの文明考」など多数の本を書いてきた人だ。

 日本にやってきた外国人の食通をレストランに案内した時のことという。外国人が店の前の陳列ケースの中の「ろう細工の料理」の見本を熱心に見ているので、大塚さんが「どれにするか」とたずねると、なぜだか、ひどく感心した様子で「ビフテキ」を指さした。

 そうかビフテキが食べたいのか、と思い、レストランの中へ入るように促すと、その外国人は、いやいやと首を振りながらこう言ったという。「いや、わたしが欲しているのはこの(見本の)料理だ。おみやげに持って帰りたいんだ…」。

 宮崎市江平東1丁目の江平四ツ目食堂で店主の大西達夫さんが殺害された事件の発覚から今日で1週間。大西さんが頭から血を流して倒れているのを来店した客が見つけ、後に死亡が確認された。県警は強盗殺人事件として犯人を追っているが逮捕はまだである。

 職場から図書館に行く途中、食堂前に立ち止まってろう細工の見本を眺めるのがわが長年の習慣だった。店の長い歴史を物語るような、ちょっと煤(すす)ぼけた感じのカレーライス、オムライスたちが並んでいてなぜか昭和が懐かしくなった。

 発生場所を聞いて耳を疑ったのはぶっそうな事件とは無縁そうなレトロ感あふれる老舗のたたずまいを知るゆえだった。朝夕、小学生も含めて多くの人が行き交う一帯。ろう細工のような精緻な捜査が実を結び事件が解決することを望む。

のろし

日報抄 9/16

宇宙人文学という分野がある。「宇宙人」で区切りたくなるが、宇宙・人文学である。その研究分野は、人工衛星がもたらした1枚のデータから始まった。

自身の山荘を地図で探していたのだという。日曜大工でこしらえたささやかな山荘は、インターネットにある地図画像でも森に埋もれ、友達を誘うことができない。弱っていた2006年、打ち上げられて間もない衛星「だいち」のデータに救われた。宇宙からとらえた地表の凹凸を細かく映し出していた。

山荘のあるじは新潟市出身のノンフィクション作家、中野不二男さんである。この発見が、宇宙からの目と人文科学との融合につながる。古文書に書き残された情景と衛星データを照合し、いにしえの海岸線がどうであったか、海を渡ってきた人がどこから何を目印に上陸したのかを探る。

戦国時代の「のろし」がどうやって情報を伝えたか、そういう謎解きもなされている。はるか空の上にあるカメラの方が、地上の移ろう営みを教えてくれるというのが不思議である。

来月、日本航空宇宙学会の人々が新潟市でさまざまな発表をする。暫定版のプログラムをのぞくと専門的であるが、天空を突き抜ける高い塔を延ばす「宇宙エレベーター」とか、「宇宙で生きる」といったテーマが見える。

神秘であった空間が手の届くところまで近づいている。この星を逃げ出す日が近づいているとは考えたくない。だが遠い宇宙からは地球の緊迫を伝える「のろし」が見えていることだろう。

サンマ

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河北春秋 9/16

 ラストシーン、家に一人たたずむ故笠智衆さんの寂しそうな背中が大写しになる。故小津安二郎監督の最後の映画『秋刀魚(さんま)の味』(1962年公開)。妻を亡くした父が娘を嫁にやるまでの筋立てで、「完」を見てやっとタイトルの意味を知る。

全編1時間53分。サンマ1匹現れない。戦争を知る男が戦後を生きていくのは、失ったものと新時代をのみ込むものであり、それはどこかサンマの味わいに似ているという。甘く、塩っ辛く、時には苦い。

最近、サンマ不漁のニュースに接すると、笠さんの背中がどんどん遠ざかっていく感じがする。昨年の漁獲量本州1位大船渡港に続き同3位気仙沼港もイベントの延期や中止を強いられた。これでは魚名の由来の一つとされる「祭魚(さいら)」の名が泣こう。

だが、不漁の流れは止まらない。70年代は漁獲量20万~30万トンで推移しながらも、ここ2年は約11万トンと過去最低を記録。先の国際会議で水産庁は「サンマ自体が減りつつある。今年も同じ程度か」と明らかにした。

ただ、漁獲量は隣の台湾が日本を逆転し中国も急増中とか。やはり、寒流や暖流という潮の流れも影響しているのだろう。でも、日本人にしか分からない『秋刀魚の味』の妙味も国境を越えていく。それはそれで、「うれしい」と言っておく。

なつみはなんにでもなれる





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見事な危機対処心得

中日春秋 9/16

一九四〇年の秋、ロンドン郊外の名門リッチモンド・ゴルフクラブのコース上に、爆弾が落ちた。ドイツ軍がロンドンを盛んに空襲していた時のことだ。クラブでは早速、こんな特別ルールをつくった。

<競技中に銃撃や爆弾投下があった場合は、罰打なしでプレーを中断し、避難することができる><爆弾の爆発によりストロークが影響を受けた場合、同じ場所から一打罰で打ち直すことができる>

空襲で「ゴルフなどしている場合か」となっては、脅しに屈するようなもの。平気な顔で日常生活を続けようではないか…との姿勢を示したのだ。

きのうの朝は、大騒ぎであった。テレビは「ミサイル」ばかり。日常生活を丁寧に生きることの素晴らしさを描いたNHKの連続テレビ小説『ひよっこ』も、吹き飛ばされた。

北朝鮮がミサイルを発射しているのは、ある種の恐怖戦術だろう。電車は止まり、各地で避難訓練が行われ…という姿を見て喜ぶのは誰か、という気もしてくる。

英国の名門イートン校はかつて、生徒手帳にこういう「爆撃・爆破警報が出た場合の対処法」をのせていた。(1)建物が近くにある場合、ただちに中に退避せよ (2)室内にいる場合、飛散するガラスを避けるため窓を開け、カーテンを閉めよ (3)運動場にいる場合は、競技を続けよ。現実的で、ユーモアも忘れぬ。見事な危機対処心得ではないか。

…………………………

【コラム】筆洗 (中日新聞の東京版)

2014年6月14日東京新聞TOKYOWeb

英国の名門イートン校の生徒手帳にはかつて、こんな心得が記されていた。「爆撃・爆破の警報が出た場合の対処法 建物が近くにある場合は、すぐ中に退避せよ。室内にいる場合は、飛散するガラスを避けるため窓を開けカーテンは閉めよ。運動場にいる場合には、試合を続行せよ」

さすがはサッカーやラグビーなど雨天決行のスポーツを生んだ国。いったん試合に臨めば、それこそ雨が降ろうが槍(やり)が降ろうが闘いに集中せよということか

名作『一九八四年』などの作者ジョージ・オーウェルもこの名門校の卒業生で、こんな言葉を残している。「スポーツの真剣勝負とは、銃撃なき戦争だ」。その銃撃なき戦争が、時として銃撃を止める力を持つ。

ついに開幕したサッカー・ワールドカップで、あす日本代表が初戦を戦うコートジボワールは、長く宗教や地域対立が複雑に入り組んだ内戦に苦しんできた。同国代表が初のW杯切符を勝ち取った時、ドログバ選手は和平への思いを語り、国民の心を動かしたそうだ。

「私たちはこの国の人々がともに生き、同じゴールに向かいプレーできることを証明した。次は皆さんがやってみせてください。武器を置いてください」

直径二十二センチほどのボール一つが、直径一万二千七百キロの惑星の人々の目をくぎ付けにし、心を動かす。宇宙人が見たら、不思議な球に見えるに違いない。

…………………………

世界中の紳士のお手本たるイギリス人は、
例え何が起こっても慌てず騒がず落ち着いて行動しなければいけません。

イギリスのとある老舗ゴルフクラブでは
「もしゴルフのプレー中に爆撃が始まったら」というユニークなルールが定められています。

ロンドン近郊にあるリッチモンド・ゴルフ・クラブは1891年に創立され、
現在も運営が続く老舗のクラブ。
第2次世界大戦が勃発し、ドイツのイギリス爆撃が激化した1940年8月のある夜、
とうとうゴルフ場に爆弾が落ち被害が出てしまいました。
普通なら営業を見合わせ疎開してしまうところなのですが、そこはイギリスの紳士たち。
ユーモアのセンスと反骨っぷりがひと味違いました。
「爆撃の際の暫定ルール」と題し、以下の特別ルールを採用したのです。


1.芝刈り機の破損を防ぐため、爆弾や榴弾の破片の回収をお願いします
2.競技中の銃撃・爆撃の際、プレイヤーはプレー中断のペナルティなしで隠れることができます。
3.遅延作動式の爆弾の落下した場所は赤旗でマークされます。
 安全と考えられる距離に立てられますが保証はありません。
4.フェアウェイやバンカーに落ちている破片がボールからクラブの長さ以内の距離にある場合、
 それをペナルティなしで取り除くことができます。
 その際ボールが動いてしまってもペナルティはありません。
5.敵の攻撃によりボールが動いてしまったり、紛失・破壊されてしまったときはペナルティなしで
 ドロップ(拾い上げて打ちやすい場所に落とす)できます。
6.爆撃によるクレーターにボールが落ちた場合、ボールとホールを結んだ直線の、
 ホールより遠い側にドロップできます。
7.ショットと同時に爆弾が破裂しショットが邪魔された場合、
 同じ場所から1打ペナルティを加算してショットできます。


当時はまさにバトル・オブ・ブリテンの真っ最中にも関わらず
「ドイツの空襲?知らんね?」と言わんばかりの堂々っぷり。
イギリス中の新聞がこのルールを取り上げナチスドイツを批判するとともに、
激しい空襲にさらされていたイギリス中の人を勇気づけたようです。
さて、この話には続きがあります。時のナチスドイツの宣伝相ゲッベルスが、
このルール追加をネタにしてイギリスへの宣伝放送でこうブチ上げました。

「イギリスの気取り屋どもは、こうしたバカげたルールの改変を宣伝し、
 偽りのヒロイズムを英国民に植え付けようとしている。
 そもそもゴルフをプレーするのに危険はない。
 なぜならドイツ空軍は目標を軍事的に重要な施設に限っているからだ」


これに対するリッチモンド・ゴルフ・クラブのコメントは、
自身の歴史を解説するページで一言だけ。
「すなわち私どもの洗濯小屋が軍事施設として認められたということであります」

これぞジョンブル。実にクールですね。