2017年09月08日の記事 (1/1)

玄奘三蔵

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日報抄 9/8

玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)といえば、女優の故夏目雅子さんを思い浮かべる人も少なくないだろう。玄奘はもちろん男性であるが、40年近く前のテレビドラマ「西遊記」では玄奘の高貴さを夏目さんが表現した

東京国立博物館には重そうな笈(おい)を背負った旅姿の僧の画がある。インドから多くの経典を唐に持ち帰った玄奘の姿といわれ、鎌倉時代の作らしい。その目鼻も眉も繊細な線で描かれ、絵師の玄奘に対する尊敬の念がうかがえる。

新潟市東区の延命寺には玄奘の金銅座像がある。玄奘の遺骨を納める中国西安市の興教寺から7年前に贈られた。関係者による交流の証しだ。今月3日に興教寺の住職らが訪れ法要を営んだ。「この友好が発展し、アジアの幸せにつながるように」と。

座像の顔はなんとも穏やかだ。過酷な旅を通し、悟りの境地に至ったからか。玄奘は唐を密出国し、砂漠や山脈を越え、3万キロを巡ったとされる。劇と違ってお供の孫悟空はいない。危険な旅だった。

画家の畠中光享(こうきょう)さんも柔らかなタッチで玄奘を描いた。経巻を持って歩く姿で、奈良の興福寺が再建する中金堂の柱絵の一つになる。9日から新潟市新津美術館の「興福寺の寺宝と畠中光享展」で公開される。

帰国した玄奘に皇帝は、見聞録を書かせた。国外の情報が入りにくかった時代、貴重な資料となった。進んだ現代の情報網が捉えるのは、きな臭い話ばかり。情報収集力は、国際社会の知恵を集めるために使いたい。危険な旅をしなくても平和の道を悟れるはずだ。

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物に争はず

越山若水 9/8

「徒然草」は兼好法師の手による鎌倉末期の随筆集だ。序段でいきなり「手持ちぶたさに任せてとりとめも無く書くのは、実にくだらない」と自作を卑下している。

しかし全243段のテーマは人生観や仏道から友情、恋愛、季節の情緒まで幅広い。筆さばきも時に辛らつ、時に軽妙で、現代人にも通じる奥深い内容である。

第130段「物に争はず」は勝負事の心得を説く。「人に本意(ほい)なく思はせてわが心を慰まん事、徳に背けり」。相手を落胆させて喜ぶのは道徳にもとる行為だという。

単に楽しみで始めた遊び事でも、長く恨みが残る例は多い。これは争いを好む弊害である―と「自分第一主義」の思考にダメ出しする。続く「貧しき者」の段では、分相応の行動が大事だと忠告する。

「おのれが分を知りて、及ばざる時は速やかにやむを智(ち)といふべし」。限界を感じたら手を引くのが賢明。分際をわきまえないと不正を働き、体を壊す羽目になると戒める。

兼好法師の文言をぜひ聞かせたい人物がいる。国連安保理決議を無視し、核実験とミサイル発射を強行する北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長である。

「米国への贈り物だ」と挑発を続ける北に、米は石油の輸出禁止など異次元の圧力を安保理に提案した。制裁が決まれば市民生活も支障を来す。あす9日は北の建国記念日。「物に争わず」こそ賢い選択だが…。

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物に争はず、おのれを枉(ま)げて人に従がひ、我が身を後にして、人を先にするにはしかず。

万(よろづ)の遊びにも、勝負を好む人は、勝ちて興あらんためなり。おのれが芸の勝りたる事をよろこぶ。されば負けて興なく覚ゆべき事、又知られたり。我負けて、人をよろこばしめんと思はば、更に遊びの興なかるべし。人に本意(ほい)なく思はせて、わが心を慰まん事、徳に背けり。陸しき中に戯るるも、人をはかりあざむきて、おのれが智のまさりたる事を興とす。これ又、礼にあらず。されば、始め興宴よりおこりて、長き恨みを結ぶ類多し。これみな、争ひを好む失なり。

人に勝らん事を思はば、ただ学問して、その智を人にまさらんと思ふべし。道を学ぶとならば、善に伐(ほこ)らず、輩(ともがら)に争ふべからずといふ事を知るべき故なり。大きなる職をも辞し、利をも捨つるは、ただ学問の力なり。


口語訳
物事において争わず、自分を曲げて人に従がい、自分の身は後にして、人を先にするに越したことはない。

あらゆる遊びにおいても、勝負を好む人は、勝って喜ぶためである。自分の腕前が勝っていることをよろこぶのだ。であれば負けて面白くなく思う事も、また知られる。自分は負けて、人を喜ばせることを思えば、まるで遊びの楽しさは無いはずである。人に残念に思わせて、自分の心を慰める事は、徳に背いている。

仲の良い関係の中に戯れていても、人をだまし欺いて、自分の知恵が勝っている事を喜ぶのふである。これも又礼儀に反している。

であれば、最初は楽しみが始まったことでも、ついには長い恨みを持つようなことは多い。これらはみな、争いを好む欠点である。

人に勝ろうと思うなら、ただ学問して、その知恵を人にまさろうと思うべきだ。道を学ぶというなら、自分の長所におごり高ぶらず、仲間と争ってはならないという事を知るべきが故である。

立派な地位や名誉も辞退し、大きな利益をも捨てるのは、ただ学問の力である。

虚構新聞

斜面 9/8

「虚構新聞」は「本当のような作り話」を掲載する人気サイトだ。例えば「安倍内閣支持率100%で横ばい―内閣府調査」。偏りがある報道各社の世論調査と違い内閣府が「公正公平な方法」で行っているそうだ。風刺が効いている。

 ジョークの世界だから笑える。だが悪意から捏造(ねつぞう)したフェイクニュースは罪深く、笑えない。昨年の米大統領選では「ローマ法王がトランプ氏支持表明」などの偽ニュースが拡散した。クリントン氏に不利な内容が多く、トランプ陣営を利したとされる。

 国際政治学者の遠藤乾(けん)さんが中央公論5月号に書いていた。英紙の検証記事によれば、フェイスブックなどの「いいね!」で集められるデータや心理分析から個人の特性をつかむ。それに合う偽のニュースや評論に誘導して不安や怒りに形を与え、特定の投票行動を促せるという。

 トランプ支持の経営者が影響力を持つ会社が関わったとされる。ツイッターの拡散もコンピューターで自動化した。フェイクニュースとは、人工知能を使って政治的帰結を企図し一人一人の有権者に照準を合わせて打つプロパガンダに他ならないという。

 民主主義が危うい。どう立ち向かうか。米国の既存メディアは息を吹き返し主要紙が購読者を増やしている。新聞は紙の手触りとともに仮面(うそ)が隠す素顔(事実)を届けたい。新聞週間の代表標語は「新聞で 見分けるフェイク 知るファクト」。読者の信頼が背中を押してくれる。


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三重県、「カール特区」申請へ 「地の利」生かす これは嘘ニュースです


東日本に別れを告げるカールおじさん
 明治がスナック菓子「カール」の販売を中部地方以東で中止すると発表したことを受け、三重県は27日、カールを公正に売買する「カール特区」の設置を内閣府の「国家戦略特区」に申請することを決めた。中部地方と近畿地方の両地域に帰属している地の利を生かし、県経済の活性化を図る。

 明治は25日、カールを9月以降、滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県以西のみで販売すると発表。三重県も中部地方の一部として販売中止地域に指定された。

 事態を受け県では26日、関係部局による緊急検討会議を招集。県財務局は、隣県から法外な価格で持ち込まれる「闇カール」の流通やカールが買える他府県への人口流出など、最大で1兆8千億円もの損失が県経済に発生すると試算した。

 また同時に対応策として、県が近畿地方のスーパーから大量に仕入れたカールに手数料を上乗せして、愛知県以東のスーパーに販売する中継貿易を提案。仕入れたカールを県の管理下で適正に販売することで闇カールの蔓延や人口流出を防ぎながら、県の増収も期待できるとした。

 県では今後これらの施策を円滑に実現するため、内閣府が主導する国家戦略特区に「カール特区」として申請する。同様の「カール特区」構想は近畿地方に隣接する福井県や岐阜県が26日までに申請を済ませているが、内閣府は三重県の発表後、急きょ申請条件に「県名に漢数字が入っていること」を付け加えた。

 三重県では昨年、中部地方からの離脱を問う「Miexit(ミエグジット)」に関する住民投票条例案が提出されるなど、たびたびその帰属が問題になっているが、カール騒動はそのあいまいさをポジティブにとらえる契機になりそうだ。

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「琵琶湖の水ぜんぶ抜く」 外来魚駆除に「排水」の陣 これは嘘ニュースです

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完全に水が抜けた琵琶湖(写真は守山市付近)

 「近畿の水がめ」として知られる滋賀県・琵琶湖の外来魚を駆除するため、1日から始まった環境事業「琵琶湖の水ぜんぶ抜く」プロジェクトで、22日、全体の98%まで抜き取り作業が完了した。

 ブルーギルやブラックバスなど外来魚による生態系の破壊に頭を悩ませてきた滋賀県では、外来魚のキャッチ・アンド・リリースを条例で禁止するなど、長年対策に取り組んできた。しかし実際には外来魚の撲滅から程遠く、県は14年、いったん琵琶湖の水を全部抜き、外来魚を駆除した後、再び水を入れ直す環境事業「琵琶湖の水ぜんぶ抜く」の検討に入り、環境省と協議してきた。

 総事業費は県収入100年分に相当する約60兆円に上るとの試算が出たほか、実施中は県内のほぼ全域で断水になったり、豪華客船「ミシガン」「ビアンカ」「うみのこ」が休航したりするなど、県経済への影響は計り知れないが、「外来魚と共存するくらいなら死んだほうがまし」という県民の総意を受け、1日から抜き取り作業が始まった。琵琶湖を取り囲むように配置した超大型ポンプ約8千台が、275億トンの水を1日12億トンペースで汲み上げている。

 22日現在、最深部付近にはまだ水が残っているものの、完全に水がなくなった南湖や北湖東岸では10日ごろから外来魚の駆除が進んでいる。湖岸に設置された「外来魚回収ボックス」には大量のブラックバスがあふれ、炎天下のもとで勢いよく死臭を放っていた。ボランティアとして駆除に参加する仰木サトさん(78)は「外来魚がいなくなるなら琵琶湖の1つや2つ干上がってもかまいません」と汗をぬぐいながら話す。

 思わぬ歴史的発見もあった。安土城跡がある近江八幡市の湖底からは、南蛮製の西洋人形が粉々の状態で大量に発見された。西洋人形は明智光秀が愛していたとされており、「光秀の遠征中、織田信長が人形を勝手に処分したことが本能寺の変につながったのではないか」という説を裏付ける大きな発見になりそうだ。

 琵琶湖の下流に位置する京都府の男性は「まさか本当に琵琶湖の水を止められる日が来るとは」と驚きを隠せない。