2017年09月02日の記事 (1/1)

数学嫌い

風土計 9/2

 世に「数学嫌い」は多い。文系、理系の分岐点に「数学」を挙げる人も少なくない。作家はどうか。縁遠いように思えそうだが、そうとは言えない。人気作家の東野圭吾さんは理系出身、直木賞受賞作「容疑者Xの献身」では数学の天才が重要人物だ。

片野善一郎著「数学を愛した作家たち」には数学好きの人、苦闘した人、思考を創作に役立てた人らが登場。得意組の一人とされるのが「銭形平次捕物控」の作者、紫波町出身の野村胡堂だ。

旧制盛岡中時代、唯一将来性を感じた科目という。作家になり、トリック作成の秘けつを聞かれると「数学の問題を考えるようなもの」と答えた。人情味あふれる捕物小説の筋立てを支えていたのは、数学的思考だった。

平次の子分、ガラッ八のせりふ「大変だッ」というほどではなくても、教育関係者は心配に思っているのかも。全国学力テストの結果だ。本県中学3年生の数学が、知識問題、活用問題とも全国を下回った。

数学の勉強についての質問では「好き」「どちらかと言えば好き」は53・3%で、これも全国平均より下。興味を持ち、楽しむことが鍵になりそうだ。では、「好き」に向けるベクトルを大きくするにはどうするか。

お薦めは、軟らかい内容の数学エッセーか。そして案外、ある種の捕物、推理小説の中に潜んでいるかもしれない。

サムライブルー

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越山若水 9/2

快哉(かいさい)を叫んだ人、感涙を流したファンもいただろう。サッカーの日本代表「サムライ・ブルー」が宿敵オーストラリアを破り、W杯ロシア大会の切符を手にした。

勝利の瞬間、思いも寄らぬ光景を目にした。こわもてのするハリルホジッチ監督の涙である。両手を広げバンザイをした後、目を潤ませスタッフと抱き合った。

「鬼の目にも涙」? 確かにアジア最終予選は黒星で始まる苦難の道のり。オーストラリアにW杯予選で勝ったことがない。メンバーの体調も万全と言えなかった。

まさに逆境でつかんだ連続6回目の出場権。「私は負けるのが大嫌い」と何より結果を求めた。「選手はデュエル(決闘)の強さを向上させるべきだ」と、1対1の球際で負けないプレーを要求した。

だから従来型の流麗な技術で「つなぐサッカー」を捨て、局面の力と気迫を重んじるスタイルを追求した。勝つために調子のいい選手を優先し、若手起用にも積極的だった。

祖国ボスニア・ヘルツェゴビナで内戦に巻き込まれたハリル監督である。原爆や地震の傷痕が残る日本で託された使命達成は感無量だったに違いない。

「愛国心や誇りのため、選手はサムライにならないといけない」。戦前、闘将はこう注文した。果たして日本イレブンに合格点を与えるのか。答えは恐らく9カ月後のロシア。「デュエル」の挑戦はまだまだ続く。

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河北春秋 9/2

 東欧のボスニア・ヘルツェゴビナにモスタルという古都がある。世界遺産の美しい橋が有名だが、24年前、激しい民族紛争で破壊された。その時、路上で「戦争をやめろ」と訴えたのが、地元サッカーチームの監督だったバヒド・ハリルホジッチさん。

銃撃され、命を付け狙われてフランスに脱出。家も焼かれたが、欧州やアフリカで名監督となり、2年前から日本代表を率いる。代表監督の先輩イビチャ・オシムさんが同胞で、その郷里も戦場となった。戦火の歴史を重ねた同地の男は頑固な反骨漢が多いという。

来年のワールドカップ・ロシア大会出場を懸けた先夜のオーストラリア戦。日本代表の鮮やかな勝利に、テレビの前で歓声を上げた家庭も多かろう。躍動したのが新世代の選手たち。常連の香川真司選手(FCみやぎ出身)、本田圭佑選手らはベンチにいた。

大胆な抜てき、そして非情と映った采配こそハリルホジッチ流らしい。アルジェリア代表監督だった前回ブラジル大会では、相手を研究し尽くして選手を替え、変幻自在と言われた。

「1人で全責任を負っての決断は本当に孤独」と語ったのは元日本代表監督の岡田武史さん。負ければ批判され解任も待つ。決戦勝利は、生死の分かれ目をも踏み越えた勝負師の本領発揮だったろう。

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鳴潮 9/2

 「徳島ブルー」は「ジャパンブルー」に通じる。サムライブルーのユニホームを着たサポーターらの青、青、青

 さいたま市の埼玉スタジアムの熱気が、テレビ越しに伝わってきた。サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会アジア最終予選で日本代表がオーストラリアに勝ち、8月を締めくくる熱い夜となった。先制点を挙げたのは浅野拓磨選手、22歳

 その姿に、昨年3月の本紙別刷り「阿波っ子タイムズ」の記事を思い出した。7人きょうだいという大家族で育ち、それほど裕福ではなかった。両親は懸命に働き、<母の都姉子(としこ)さんは地元三重県の強豪・四日市中央工高に入れるために結婚指輪まで売ったそうです>

 大舞台での活躍が恩返しになると考えていたが、それを現実のものにした。両親はもとより、周りの人の支えがあるからこそという思いを常に胸に置いている。好きな言葉は「感謝」である

 試合後半には、チーム最年少の21歳、井手口陽介選手が追加点を挙げた。青一色のスタジアムから上がる大きな歓声を聞きながら、「青は藍より出でて藍より青し」と「出藍の誉れ」がふと、頭をよぎった。弟子が師より優れることをいうが、努力は人を裏切らない

 来年のW杯でも、期待できそうな「出藍のホープ」が登場した。徳島ブルーも、きっと喜んでいるに違いない。