2017年08月14日の記事 (1/1)

故郷へ帰りたい



中日春秋 8/14

米カントリー歌手ジョン・デンバーの「故郷へかえりたい」は一九七一年のヒット曲で日本でもおなじみだろう。「カントリー・ロード」と呼んだ方がピンとくるか。望郷の歌である。

歌詞にウェストバージニアと出てくる。この縁でウェストバージニア州歌の一つになったそうだが、歌われるブルーリッジ山脈、シェナンドー川はいずれもウェストバージニア州というよりもお隣のバージニア州に大部分がかかっている。作詞者は地元出身ではなく、勘違いした可能性もあるそうだ。

そのシェナンドー渓谷にほど近く、世界遺産も抱えるバージニア州シャーロッツビルでの痛ましい事件である。白人至上主義者とこれに抗議する人々が衝突。猛スピードの車が抗議の声を上げていた人々に突っ込んで、女性一人が死亡。十九人が負傷した。

独立宣言起草のトーマス・ジェファソン大統領ゆかりの地。落ち着きある歴史の町に人種対立の血が流れた。

「家に帰れ」。州知事が白人至上主義者を厳しく非難したのに対し、トランプ大統領はどうも腰が定まらぬ。白人至上主義者を最後まで名指しせず「すべての側からの憎悪、偏見、暴力を非難する」。これでは差別への抗議者も悪いかのように聞こえる。

自分の支持層への配慮らしい。差別する者。それに目をつぶるかのような国のリーダー。望郷のあの温かい歌がうまく重ならぬ。