2017年05月10日の記事 (1/1)

外来種

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雷鳴抄 5/10

 約40年前、高校の修学旅行で訪れた九州各地で、黄色の花がきれいな草花の群落を見た。「悪名高いセイタカアワダチソウです」。バスガイドの説明で、在来種を脅かす外来種の存在を初めて知った。

生態に詳しい作新学院大女子短大学部の青木章彦教授によれば、本県に侵入したのは1970年代後半ごろ。北米原産で天敵もなく、悪いことに毒素を出して他の植物の発芽を抑えてしまう。

貴重な植物が多い渡良瀬遊水地で駆除作業を指導する青木教授は「大勢の人の手で引っこ抜く。これに勝るものはない」。県や小山市などの呼びかけで年5回実施され、一定の効果を上げている。

県は、社会貢献事業に関心を持つ企業と人手を求める保全活動団体とをマッチングする協働推進プロジェクトを進める。近年、積極的に関わる企業にキヤノン宇都宮事業所がある。

遊水地や奥日光以外に外来種の脅威にさらされているのが鬼怒川河川敷。キヤノンは今年3月、絶滅危惧種のカワラノギクの大敵シナダレスズメガヤの駆除に参加した。「できるところから少しずつ息の長い地域貢献をしていきたい」と担当者は言う。

県版レッドリストが6年ぶりに改訂され、絶滅危惧種が初めて1千種を超えたという。外来種を減らすことが肝要であり、1社でも多い企業の貢献が今、求められている。

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暗唱の勧め

ガマの油売り(口上)

サアーサアーお立ち会い 
ご用とお急ぎでない方はゆっくりと聞いておいで。
 遠出山越え笠のうち、聞かざる時は物の白黒出方善悪がとんと分からない、山寺の鐘がゴーンゴーンと鳴ると言いども
童子来って鐘にしゅもくを当てざればとんとカネの音色がわからない。
サテお立ち会い 
手前ここに取りいだしたるは筑波山名物ガマの油、ガマと申してもただのガマとガマが違う、これより北、北は筑波山の
ふもとは、おんばこと云う露草をくろうて育った四六のガマ、四六五六はどこで見分ける。
 前足の指が四本、後足の指が六本合わせて四六のガマ、山中深く分け入って捕いましたるこのガマを四面鏡ばりの
箱に入れるときは、ガマはおのが姿の鏡に映るを見て驚き、タラーリタラーリと油汗を流す、これをすきとり柳の小枝にて
三七二十一日間、トローリトローリと煮つめましたるがこのガマの油。
 この油の効能は、ひびにあかぎれ、しもやけの妙薬、まだある、大の男の七転八倒する虫歯の痛みもぴたりと止まる、
まだある出痔いぼ痔、はしり痔、はれもの一切、そればかりか刃物の切れ味を止める。
 取り出したるは夏なお寒き氷のやいば、1枚の紙が2枚、2枚の紙が4枚、4枚の紙が8枚、8枚の紙が16枚、16枚が
30と2枚、32枚が64枚、64枚が一束と28枚、ほれこの通り、ふっとちらせば比良の暮雪は雪降りのすがた。
 これなる名刀も一たびこのガマの油をつける時はたちまち切れ味が止まる、おしてもひいても切れはせぬ。
 と云うてもなまくらになったのではない、この様にきれいにふきとるときは元の切れ味となる。
サーテお立ち合い
 この様にガマの油の効能が分ったら遠慮は無用だ、どしどし買って行きやがれ!



いばらき春秋 5/10

「てまえ持ちいだしたるは、四六のがまだ。四六、五六はどこでわかる。前足の指が四本…」。

ご存じ、筑波山名物「がまの油」売りの口上である。明治時代生まれ以前の作者による詩歌や名文を中心に集めた齋藤孝さんのベストセラー「声に出して読みたい日本語」(草思社刊)に取り上げられている。

著書は暗唱・朗唱文化の復活が狙い。子どもたちにも暗唱を勧め、意味が分からなくとも「最高級の日本語」を体に染み込ませることが大切と説く。「本当に質の高いものに幼い頃に触れる。そのことが、おそらく五十年後、六十年後になっても人生を豊かにしつづける」。

対極と表現していいか分からないが、最近、日本一楽しい学習書として売り出し中の「うんこ漢字ドリル」(文響社)が話題だ。小学1〜6年の漢字の読み書き問題全ての例文に「うんこ」が出てくる。

子どもにとっては気持ちが盛り上がり、口にするだけで楽しくなる魔法のような言葉とし、勉強に対する意識が変わり、笑顔で机に向かう子どもたちが増えることを願う、とドリルの趣旨。

特設コーナーを設けるなど県内書店でも人気という。子どもの注目を集め、「取りあえず机に向かって」と願う親を刺激したのは確かのようだ。 


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働くパパママ川柳

三山春秋 5/10


 〈カバンには パソコンスマホ 紙おむつ〉。オリックスグループが4月に発表した第1回「働くパパママ川柳」の大賞作品だ。保育園に子どもを送る朝の慌ただしい家庭の様子を思わせる 。

 通園バッグに入れるはずの紙おむつをバタバタと準備するうちに誤って仕事用の自分のカバンに入れ、そのまま出勤してしまったのだろうか。神奈川県の42歳の女性の作品という 。

 「あるある」と思われた人も多いに違いない。朝は子どもに食事を与えるなどしてせわしなく園に滑り込み、帰りは時計を気にしつつ園へ急ぎ、渋滞に恨みごとも言いたくなる… 。

 安中市にある精密部品加工のユー・コーポレーションを訪ねた。敷地内に企業主導型保育所を開いた。延べ床面積300平方メートルを超す建物を新設。長く働ける環境をつくると同時に、将来的な人材確保にも有効とみる 。

 「企業主導型」は一定の質を満たせば、国から認可保育所並みの助成金を受け取れる。3月末現在で県内は同社など8施設の助成が決まっている。朝夕の慌ただしさがなくなる一助になればいい 。

 女性が働くという視点から始まった同社の保育所開設話だが、男性従業員も利用できる。冒頭の受賞川柳に〈おむつ替え プレゼンよりも 汗が出る〉がある。こちらは男性の作品。男性の働き方、育児についても考えさせられた。


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◆受賞作品
大賞(1句)

カバンには パソコンスマホ 紙おむつ なおみん(42歳・女性/神奈川県)       
      

パパ目線賞(3句)

パパ育児 一度は試す 父の乳 パパシー(30歳・男性/福岡県)
おむつ替え プレゼンよりも 汗が出る 新婚さん(36歳・男性/大阪府)
ワンオペで 家事が回る日 神ってる 兼業主夫(37歳・男性/東京都)

ママ目線賞(3句)

欲しいのは 子供と主婦を もう1人 パタパタママ(34歳・女性/大阪府)
すべりこむ 会社に園に お布団に 煮え湯(39歳・女性/京都府)
ないのかな 家事の労働基準法 産休中(39歳・女性/埼玉県)

優秀賞(10句)

ただいまと 聞いた瞬間 ギュッとハグ ココナッツ(13歳・女性/東京都)
のっけ弁 超多忙の日の 母分る 野球少年(14歳・男性/三重県)
上司より 呼び出し多い 保育園 たっちゅんママ(24歳・女性/京都府)
おべんとう なぜか僕まで 離乳食 コトノシン(31歳・女性/三重県)
ひと休み したいと願い 5年経つ キーさん(34歳・女性/東京都)
築地もか うちの娘も 決まらない オンマー(36歳・女性/兵庫県)
初トイレ あんよも全て 保育園 家事リーマン(41歳・男性/埼玉県)
駅に着き 深呼吸して ママになる そらそらお(51歳・女性/千葉県)
ウイルスが 縁で三人 水入らず はますだれ(55歳・男性/神奈川県)
育休を とれば不倫を 疑われ 上の空(56歳・男性/京都府)

お弁当

日報抄 05/10

遠足にはいい季節だ。園児たちのにぎやかな列を見かけることがある。五月晴れの下で食べるお弁当はさぞおいしいことだろう。

手元の辞書によると、「弁当」の語は「面桶(めんつう)」あるいは「便当」から来ているといわれる。面桶は飯を1人前ずつ盛って配る曲げ物。便当は便利なものなどという意味である。弁当といえば高校時代を思い出す。級友は部活の朝練で腹が減る。2限と3限の間に早弁していた。アルミの弁当箱が目に浮かぶ。

ニチレイフーズが先ごろ47都道府県の弁当事情をインターネットでアンケート調査した。「平日ほぼ毎日お弁当を作る」と答えた人の割合は、新潟県が全国1位の32・7%だった。2位は岩手県(31・7%)、3位は秋田県(31・3%)。

同社の推計によると「年間の一般世帯のお弁当の総個数」は約50億個。自分用と配偶者用が7割で、残りが子ども用。注目したいのは「月1回以上お弁当を作り、かつ家族のいる男性」のうち、妻に弁当を作っている人が約3割いるという点である。

弁当は母が子に作るもの、というのはひと昔前の話。現代の「作る人」と「食べる人」の関係はさまざまであることが分かる。弁当作りに限らず、家庭内の役割分担は臨機応変が長持ちのコツだとか。「できる人が、できることを」なのである。

「母の日」が近い。「お母さん、いつもお弁当ありがとう」に加え「父の日」を待てず、家族から「お父さん、ありがとう」のひと言を聞きたい人があちらにも、こちらにも-。

赤ちゃん

越山若水 5/10

胎児に異常がないかを調べる出生前検査を受けるべきかどうか、川上未映子さんは悩んだ。おなかの赤ちゃんは「100%こちらの都合」でつくられ生まれてくる。

ならば、と考えた。その「生」を「100%の無条件」で全力で受け止める。「それが筋、ってもんじゃないのだろうか」(「きみは赤ちゃん」文藝春秋)と。

川上さんといえば芥川賞作家。自身初めての出産体験の一部始終をつづったエッセーは普通の女性には筆舌に尽くし難い苦しさを的確に言葉にし多くの共感を得た。

ただ、川上さん夫婦のように「100%の無条件」で赤ちゃんを受け止められない人がいるのも現実だ。思いもかけない妊娠、経済的困窮、周囲の反対など理由はさまざまある。

そんな親が匿名で乳幼児を預け入れる国内唯一の赤ちゃんポストが、運用を開始して10年となった。民間の慈恵病院が熊本市で設置、運営している「こうのとりのゆりかご」だ。

これまでの9年間に託されたのは125人。並行して受け付けている妊娠相談から294件が特別養子縁組につながった。ともに重い数字である。

慈恵病院の取り組みがなければ、この子たちはどうなっていたか。おととい、自宅トイレに乳児の遺体を遺棄したとして茨城県内の30代の母親が逮捕された。頭で理解するしか能のない男の1人でも事の深刻さに身を切られる思いだ。


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35歳ではじめての出産。それは試練の始まりだった!
芥川賞作家の川上未映子さんは、2011年にやはり芥川賞作家の阿部和重さんと結婚、翌年、男児を出産しました。つわり、マタニティー・ブルー、出生前検査を受けるべきかどうか、心とからだに訪れる激しい変化、そして分娩の壮絶な苦しみ……妊婦が経験する出産という大事業の一部始終が、作家ならではの観察眼で克明に描かれます。
さらに出産後の、ホルモンバランスの崩れによる産後クライシス、仕事と育児の両立、夫婦間の考えの違いからくる衝突、たえまない病気との闘い、卒乳の時期などなど、子育てをする家族なら誰もが見舞われるトラブルにどう対処したかも、読みどころです。
これから生む人、すでに生んだ人、そして生もうかどうか迷っている人とその家族に贈る、号泣と爆笑の出産・育児エッセイ!

〈目次〉
出産編 できたら、こうなった!

陽性反応
つわり
出生前検査を受ける
心はまんま思春期へ
そして回復期
恐怖のエアロビ
かかりすぎるお金と痛みについて
生みたい気持ちは誰のもの?
夫婦の危機とか、冬
そして去ってゆく、生む生むブルー
いま、できることのすべて
乳首、体毛、おっぱい、そばかす、その他の報告
破水
帝王切開
なんとか誕生

産後編 生んだら、こうなった!

乳として
かわいい♡拷問
思わず、「わたし赤ちゃんに会うために生まれてきたわ」と言ってしまいそう
頭のかたちは遺伝なのか
3ヶ月めを号泣でむかえる
ひきつづき、かかりすぎるお金のことなど
髪の毛、お肌、奥歯に骨盤、その他の報告
父とはなにか、男とはなにか
夫婦の危機とか、夏
いざ、離乳食
はじめての病気
仕事か育児か、あらゆるところに罪悪感が
グッバイおっぱい
夢のようにしあわせな朝、それから、夜
ありがとう1歳
あとがき

課外活動

水鉄砲 5/10

 教員の長時間勤務が見過ごせない事態になっているという。文部科学省の調査では、中学校教員の57・6%、小学校教員の33・5%が週に60時間以上の勤務をしており、過労死が心配されるレベルだった。

 旧知の教員に聞くと、授業の負担は苦にならないが、問題は課外活動に割く時間と各種トラブルへの対応。熱心にやればやるほど勤務時間が長くなるし、休日には練習試合を組むので、土曜も日曜も休めない。それでも子どもたちの喜ぶ顔が見たいから、指導する側も手を抜けないという。

 僕も大学の課外活動に関係して十数年。課外活動が若者を成長させる場面を数限りなく見てきた。その奥行きの深さを実感することも多い。学生の成長を目の当たりにした監督やコーチが情熱を傾けて指導する気持ちもよく分かるし、それに期待する保護者の存在も知っている。

 こうした実態を直視し、課外活動の位置付けを考え直してはどうか。課外活動ではなく課外教育と考え、他の教科を多少は削ってでも、それをスポーツや文化活動に充てるのである。

 スポーツを通じて仲間との信頼を深める、互いに助け合って目標に挑む、文化活動で情操を養う。そうした取り組みはすべて、人間としての成長につながる。教科に対する取り組みにも良い影響が出るだろう。

 そう考えると、少しは教科の授業を削っても帳尻は合うはずだ。それが教員の負担軽減の一助にならないかと考えている。 

木登り名人

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徒然草

高名の木登りといひしをのこ、人をおきてて、高き木に登(のぼ)せて梢を切らせしに、いと危ふく見えしほどは言ふ事もなくて、おるるときに軒長(のきたけ)ばかりになりて、「あやまちすな。心しておりよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛びおるるともおりなん。如何(いか)にかく言ふぞ」と申し侍りしかば、「その事に候。目くるめき、枝危ふきほどは、おのれが恐れ侍れば申さず。あやまちは、やすき所になりて、必ず仕る事に候」といふ。

あやしき下臈なれども、聖人の戒めにかなへり。鞠も、難き所を蹴出して後、安く思へば、必ず落つと侍るやらん。


口語訳
名高い木登りという男が、人に指導して、高い木に登らせて梢を切らせる時、たいそう危なく見えるうちは何も言わず、木を下りる時軒の高さほどになって、「しくじるな。心しておりろ」と言葉をかけましたのを、「これくらいになれば、飛びおりても無事におりられよう。どうしてそのように言うのか」と申しました所、「その事でございます。目がくらくらするほど高く、枝が危ないうちは、自分自身の恐怖心がございますので、何も申しません。失敗は、安全な所になって、必ず起こる事でございます」と言う。

身分の低い下賤な者の言う事ではあるが、聖人の戒めにかなっている。蹴鞠も、難しい所をうまく蹴り上げた後、余裕だと思ったら、必ず落ちるものだとか申すそうでございます。

語句
■高名 名高い。 ■おきてて 「掟て」。指図して。 ■軒長 軒の高さ。 ■目くるめく 目がくるくる回ること。くらくらすること。 ■下臈 身分の低い者。 ■聖人の戒め 「君子は、安けれど危きを忘れず、存すれども亡びんことを忘れず、治まれども乱れんことを忘れず、ここを以て身安くして国家保つべきなり」(易経・繋辞)のことを指すか。 ■鞠 蹴鞠。

…………………………

小社会 5/10

 近所に毎年、見事に花を咲かせる桜の街路樹がある。葉桜となった後に剪定(せんてい)が行われた。枝ぶりが整いすっきりした木を見上げながら、思い出したのは「徒然草」の一段。

 木登りの名人がある時、人に指図して樹木のこずえを切らせた。ひどく高い場所で危険に思われた際にも名人は黙っている。ところが下りてくる途中、もう大丈夫という高さまできて初めて「心して下りよ」と声を掛けた。

 目がくらむ高所では本人が用心するので何も言う必要はない。過失は安心し気が緩んだ時にこそ起きやすいというわけだ。いつの時代の、どんな仕事にも通じる戒めではないか。

 難所を越えて気を抜くどころか、木のてっぺんから飛び降りるような荒っぽさである。安倍首相が「憲法9条に自衛隊の存在を明記し、2020年を新憲法施行の年としたい」と表明した。いかに唐突だったかは、自民党内から当惑の声が上がったことからも分かる。

 もとより首相には憲法の擁護義務がある。立法府の改憲論議を尻目に、行政府の長が横やりを入れるやり方にも違和感がぬぐえない。首相は党総裁としての提案、とも言うが都合のいい使い分けがどこまで通用するだろう。

 改憲論議は木登りに例えると、まだ木に取りついたところ。多くの国民は「心して議論を積み重ねよ」との思いだろう。拙速に進めて過失を招けば取り返しがつかない。慎重の上にも慎重を期して。

美女中の美女

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中日春秋 5/12

「あの人今これなんだって、ラーヂーポンポン、七カ月」。意味がすんなりと分かる方は六十歳以上か。

ラーヂーとは英語のLARGE。ポンポンはおなか。すなわち、妊婦さんとか妊娠中という意味になる。最近ではめったに聞かぬ。

日本映画の名作からせりふを引いた。一九四九(昭和二十四)年公開の「晩春」(小津安二郎監督)。「麦秋」「東京物語」と続く、「紀子三部作」の第一作である。「ラーヂーポンポン…」は紀子(原節子)とおしゃべりする親友、北川アヤのせりふ。そのせりふの主の訃報である。女優の月丘夢路さん。九十五歳。「晩春」や「華麗なる一族」での独裁的な夫に耐える夫人役を思い出す方もいらっしゃるだろう。

「晩春」での原節子との掛け合いが印象的なのは終戦直後という時代背景のせいかもしれぬ。月丘さんが演じたのは結婚に一度失敗した二十七歳の速記者。おしとやかとはいえぬが、実に屈託なく、力強い。

「まだワンダン(ワンアウト)だ! これからよ、ヒット打つの」。そのせりふは戦後復興期の日本にあって、励ましにも聞こえる。新しい女性の心意気のようなものを示していたのかもしれぬ。広島出身で大勢の同級生を原爆で亡くしている。月丘さんの美しさの中に悲しみやそれを克服した強さを見る。

「美女中の美女」。そう呼ばれた女優が晩春に旅立っていった。