2017年05月03日の記事 (1/1)

八歳の質問

中日春秋 5/3

八歳の男の子が、お母さんに尋ねる。「人はどうしているの?」。「人は一人では生きていけないから助け合うためにいるの」。すると、男の子は言い返す。「でも、戦争をして殺し合っているよ」。お母さんは、答えることができない。

どう答えたらいいのだろう?何かいい本はないか? 岩手県宮古市に住む本堂裕美子(ほんどうゆみこ)さん(64)は、娘さんからそんな相談を受けた。

そうして答え代わりに書いたのが、詩「八歳の質問」。憲法施行七十年の節目に出版された『日本国憲法の理念を語り継ぐ詩歌集』(コールサック社)に収められている。

人はなぜ存在するか。それはとびきりの難問だ。だが、<きみたちの祖母である私の答えは明快だ>と本堂さんは書く。<私はきみたちに会うためにここにいる…/きみは/私達に愛されるために生まれてきた…>

本堂さんの亡父は志願して戦地に行き、シベリア抑留を経て生還したが、その体験を生涯決して語ろうとしなかったという。「戦争というのは国家のものなのに、語れないほど重いものを個人に負わせてしまうのでしょう」

本堂さんの詩の行間には、そんな父の無言もにじんでいるのだろう。<私は/きみの未来を思い描く/きみのために何ができるのかを考える/「人はなぜいるの?」/そう問うた/八歳のきみに/自由と平和を手渡す事ができるようにと/深く/祈る>

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目次

序文に代えて
色川大吉 戦没者の鎮魂とは

1章 短歌―万世の平和

石川啄木 生きてかへらず
与謝野晶子 平和の花
宮柊二 万代の平和
馬場あき子 素足の子
鈴木安蔵 冬さらんとす
吉川宏志 個人の死より
奥山恵 「ここも」「ここも」
望月孝一 五月三日に
郡山直 我が国の平和憲法は世の宝
加部洋祐 日蝕旗

2章 俳句―九条の緑陰
金子兜太 九条の緑陰
鈴木六林男 月に戦没碑
佐藤鬼房 一粒の飯
高野ムツオ 寒の華
能村登四郎 昼顔の夢
能村研三 いのち見ゆ
宗左近 沈黙の谺
齋藤愼爾 佛の座
永瀬十悟 あをぞら
平敷武蕉 辺野古崎
松浦敬親 俳体詩・Ω寒
吉平たもつ 地球の悲鳴
武良竜彦 平和の書
春日石疼 白地に月
大河原政夫 風に鳴る
宮崎干呂 キレヂ的ケンポウ批判
井口時男 敗戦忌
3章 詩―くずれぬへいわをかえせ

宮沢賢治 雨ニモマケズ
村上昭夫 一本足の廃兵/亀
峠三吉 『原爆詩集』の序/仮 帯所にて/微笑
福田須磨子 忌まわしき思い出の日に/原爆のうた 
大平数子 慟哭
浜田知章 太陽を射たもの
鳴海英吉 被爆
嵯峨信之 ヒロシマ神話
小熊秀雄 丸の内
壺井繁治 声
菅原克己 眼
黒田三郎 引き裂かれたもの
河邨文一郎 激戦の後に
石垣りん 弔詞
大島博光 墓碑銘Ⅰ
木島始 大学 ―一九四七・八年―
茨木のり子 わたしが一番きれいだったとき

4章 詩―戦中・わすれえぬこと

北村愛子 わすれえぬこと ―おとうさん―
岡隆夫 馬ぁ出せぃ
北畑光男 葬送の貨物列車
青山晴江 花岡鉱山慰霊 ―鉱泥蒼き水底に
上野都 たやすく書かれた詩 ―時を結ぶ返し歌の
高良留美子 北田中の山本さん/老兵たち
菊田守 千鳥ヶ淵の鯉 ―二〇〇九年三月
福司満 七十年経って
大村孝子 さんさんと心残りせよ
山口賢 早春
田中裕子 印される日
皆木信昭 松根掘り
稲木信夫 深夜消そうとする
田中作子 鹿島防空監視隊本部の経験 ㈡
細野豊 はるか奥底から聞こえる
椎葉キミ子 むかしこうそう
方喰あい子 《Y市の橋》へのオマージュ
山本衞 待つ
玉川侑香 海を越えてきた手紙
橋爪さち子 つなぐ
築山多門 声が聞こえる
矢野俊彦 鬼にもならず神にもならず
宮沢一 「戦前」
星清彦 空を眺めて
佐々木 子 方角
星野博 ハーモニカ
萩尾滋 立ちつくす戦後
酒井一吉 改札口
たにともこ たった一つの願い
佐々木久春 二人の女学生が語る

5章 詩―広島・長崎の荼毘

橋爪文 荼毘
豊田和司 あんぱん
林嗣夫 夏の日に
越路美代子 ジュピター
草薙定 ヒロシマから ―二〇一六年―
山野なつみ 灼熱の選挙
近野十志夫 記憶の旅
鈴木文子 海底の捨石
崔龍源 ポキン
谷崎眞澄 夜明け

6章 詩―戦死せる教え児よ

竹本源治 戦死せる教え児よ
瀬野とし 母たち
石川逸子 竹本源治先生へ
高田真 のさる
中桐美和子 一枚の
矢口以文 壊れる瞬間がある
大塚史朗 平和教育
柳生じゅん子 三歳/お絵かき
森三紗 渡り廊下で桜田先生は
川奈静 大きなあやまち
原かずみ ひらがなの陽
本堂裕美子 八歳の質問
三井庄二 卒業式 ―二〇〇〇年三月七日―

7章 詩―未来の約束
淺山泰美 未来の約束
ひおきとしこ 憲法に憧る
桜井道子 墓碑銘
速水晃 大切に
植松晃一 奪命者にはならない
原子修 木霊 ―日本国憲法に―
高橋郁男 「風信 六」より
志田静枝 夏空
森田和美 暦
紫あかね アンファン アンスゥミ
石川啓 覚醒〈憲法を見張る〉
神原良 悲し日・1/2/3/4
金野清人 日本国憲法への思い
石村柳三 国民主権と言論表現の自由の大事
池田洋一 今日のかがやき
青柳晶子 晴着
山本涼子 日本の宝
植田文隆 忘れてもずっと
小田切敬子 けんぽーつえつきあるいてゆこう
秋山泰則 戦争がおわって・・・

8章 詩―沖縄・希望の海

うえじょう晶 希望の海
八重洋一郎 写真
神谷毅 出原の幻影/オスプレイ悪夢
呉屋比呂志 うるま島
久貝清次 きみがうまれたほし
かわかみまさと ケンポウの花
芝憲子 高江の山桃/どこにいるの
館林明子 移り変われば
杉本一男 ごぼう抜き
志田昌教 ひめゆりの塔に寄せて
麦朝夫 歯の穴から
村尾イミ子 海が笑う
二階堂晃子 今、声を
佐々木淑子 屍の上に輝く星/鳥になりたい/
      なんでじゃ なんでじゃ
猪野睦 知らないところで

9章 詩―九条は水のように

佐藤文夫 九条は水のように 空気のように
門田照子 未来への伝言
若松丈太郎 積極的非暴力平和主義の理念を貫きたい
南邦和 九条 ―自伝風に
根本昌幸 こいびと
杉谷昭人 総理の夏
小松弘愛 蚕よ
赤木比佐江 二〇一六年九月十九日の集会
やまもとれいこ いつか
朝倉宏哉 戦争箒
月谷小夜子 夾竹桃の禍々しい赤に
植木信子 平和憲法は希望の灯
中村惠子 君の居る場所
酒井力 希望の光
永山絹枝 躓き起ちあがった源泉の証
志甫正夫 永久のちかい
伊藤眞司 あるカッパ
近藤八重子 憲法九条という傘
和田攻 世界に九条をプレゼント
河野洋子 永久の平和を願う
たけうちようこ 道に訊く
宮本勝夫 旅路 ―「九条」と共に
木村孝夫 数のてっぺんに立つ男
渡邉眞吾 嬰児
竹内正企 九条の誓い
髙嶋英夫 永遠の平和
山﨑夏代 今は 守るとき
鈴木比佐雄 恥辱のあまり崩れ落ちる「憲法九条」
酒木裕次郎 永久に耀く憲法九条

10章 詩―人権・あなたは 物もらいではないか

徳沢愛子 あなたは 物もらいではないか
望月逸子 一月十七日の朝に
恋坂通夫 酋長の言葉
曽我貢誠 学校は飯を喰うところ
こまつかん 豊かな未来は
青木善保 ちょっとしたこと
万里小路譲 アリの知恵
市川つた 重い荷物
日野笙子 バーバラの遺言
梅津弘子 憲法29条
くにさだきみ 『ブリ市』のブリ
琴天音 24HFTM
みうらひろこ 多数決議を許してはいけない
木島章 カルガモ
洲史 蔓ったぐり
日高のぼる ティーアガルテン通り四番地
栗和実 吾が遠い農地
田島廣子 憲法を知れば
あたるしましょうご中島省吾 いやになってくる/
おい、民間保険で格差殺人を図っているのか?
片桐歩 残酷の月

11章 詩―福島・夕焼け売り

齋藤貢 夕焼け売り
安部一美 避難する日
高橋静恵 失くしたサンダル
坂田トヨ子 日本という国に生まれて
岡田忠昭 浪江駅にて
堀江雄三郎 きくまいぞ
伊藤眞理子 閾値
谷口典子 広野のさくら
司由衣 野の花
長津功三良 百姓の小倅
浅見洋子 日本憲法下の人権

12章 詩―ことばは死なない

季村敏夫 神戸詩人事件のこと
前田新 万金丹の話
いだ・むつつぎ 集まり
田上悦子 ことばは死なない
松本高直 エチュード
山下俊子 駐車場
舟山雅通 大人の自覚
新井豊吉 地べたから物申す
末松努 ふたつでひとつ
畑中暁来雄 マンション美化運動
原詩夏至 司馬遷

13章 詩―明日のために

堀田京子 明日のために
三浦千賀子 平和とは
名古きよえ ドイツを旅して
福田淑子 夜の高速道路(自由と平和の方程式)
佐相憲一 西武拝島線沿線
勝嶋啓太 ケンさん
山口修 欠片
井上摩耶 スモールワールド
うめだけんさく 暗い海で
佐藤勝太 星たちの願い
和田文雄 悲田院
池下和彦 時代おくれ
秋野かよ子 鍵を作ろう
米村晋 波の響きと風の音と
鳥巣郁美 放つとき ―銃のまわりで―
結城文 二つの墓の対話
山岸哲夫 馬脚を露わす
吉川伸幸 ぼくの先を
中山直子 日本列島の形をした雲

 解説
佐相憲一 詩歌の心で黄金の共生の願いを明日につなぐ
鈴木比佐雄 カントの永遠平和論を抱き個人の
      尊厳を二度と喪失させないために