2017年05月の記事 (1/13)

ワトソン

中日春秋 5/31

英語の「ワイズマン(WISE MAN)」は「賢人」。では「ワイズガイ(WISE GUY)」は? 正反対の「知ったかぶり」の意味になる

ほぼ同じ言葉なのに、なぜこれほど意味が異なるのか。その人工知能(AI)システムの開発でまず、苦しんだのは言葉の問題だった。人の使う矛盾もある自然言語をどう理解させるか。

恋する女性がお相手に「バカ」とささやいてもそれはバカの意味ではない。その手の言葉を教えるとしたらと空想する。その高い壁を乗り越え、完成したのがIBMの「ワトソン」。二〇一一年、クイズ番組のチャンピオンを打ち倒し一躍有名に。最近は医療分野でも成果を上げると聞く。

「ワトソン」に新しい仕事である。ソフトバンクが新卒採用の選考にその頭脳を借りることにした。「ワトソン」に応募者のエントリーシートを判定させるというから最初のふるいである。

さまざまな辞書や文学作品、新聞記事、ウェブページなど約二億ページ分のデータを集積するAIに手抜かりはあるまい。えこひいきもない。作業も大幅に短縮される。

時代とはいえ、ひっかかるのはそれが就職という人生の分かれ目に使われること。若者が祈りを込めて書いたシートを最初に見るのが人ではなくAI。古いやつだとお思いでしょうが、大切な何かが失われていないか。賢人、ワトソンよ。君はどう思う。


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 ソフトバンクは29日、来年4月に入社する新卒の総合職採用者の選考に人工知能(AI)を使うと発表した。志望者がインターネットを通じて提出するエントリーシートにある二つの設問への回答のうち、一つを日本IBMのAI「ワトソン」が採点する。IBMによると、企業が採用活動にワトソンを使うと公表するのは初めてという。

 AIが採点するのは、昨年12月から受け付けているエントリーシートのうち、5月中旬以降に提出されたもの。約400人が対象とみられる。設問は記述式で、昨年12月以降に人間がつけた高い評価や低い評価約1500人分を学習させ、AIが3段階で評価する。

 AIが「低い」と評価した回答は、人間が改めて評価する。もう1問はAIを使わず担当者が評価する。エントリーシートによる選考の合否は2問の評価を合わせて決めるため、AIの評価だけで不合格になることはないという。合格者は一般教養などの適性検査に進む。書類選考の合格率は明らかにしていない。

 質問は、ソフトバンクが重視する「ナンバーワン」「挑戦」など五つの理念を示した上で、「五つのうちあなたの強みに合致する項目と、強みを発揮したエピソード」を問う内容。AIは瞬時に文章を分析し、評価を出す。AIを使うことで、この質問の評価にかかる時間を4分の1に短縮できるという。

 同社は「複数の人事担当者による評価のずれを防ぐ効果もある」として今後、2問ともAIに評価させることも検討する。

強い結束

日報抄 5/30

水は、身の回りにごく当たり前にある。その水は科学の目で見ると、かなりの変わり者らしい。過去の紙面に氷水の例が出ていた。喫茶店で最初に出てくるあれだ。氷が浮いている。固体が浮いているのは、実は不思議なことなのだという。

例えば溶かした鉄に塊の鉄を入れると沈む。固体の方が液体より密度が高い。沈むのが普通だ。しかし、水は特殊で、氷という固体の方が液体の水よりも隙間が多い。特殊な構造をしている。

グツグツいいだす沸点にしても変わっているそうだ。たいした分子量でもないのに、100度という高い沸点を示す。沸点が高いということは、それだけ分子同士の結合が強く、なかなかバラバラにできない性質であることを表している。

グラグラと煮え立つ鍋を見るようだ。北朝鮮からまたミサイルが飛び、佐渡沖500キロに落ちた。泡が次から次へと噴きだし、冷めることがない。緊張を生むしかない無益な泡である。

その国は「全面戦争には全面戦争で、核戦争には核攻撃戦で対応する」とミサイル同様おぞましい言葉を発し続ける。国際社会の我慢の限界を探っているようだ。これだけの挑発を受け、「レッドライン」とも呼ばれる国際社会の沸点がどこまで下がっているのか、誰にも分からぬ恐ろしさがある。

水は隙間があろうとも強く結びつく。この水の惑星も結束が頼り。安倍晋三首相をはじめ先進7カ国の首脳は核・ミサイル開発の放棄を北朝鮮に促した。崩れることのない強い結束でありたい。

これは、現実なのだ

中日春秋

サバンナの地平線に太陽が沈み、村が深い闇に包まれると、人々はたき火を囲んで座る。虫の鳴き声が天然のオーケストラのように響き、ライオンがほえる声も聞こえる。

語り手が「これは、とても古いお話だ」と言って話し始めると、それを遮る者はいない。邪魔をすれば悪夢に襲われると、みな信じているのだ。

アフリカ・南スーダンのディンカ人はそうやって部族の物語を伝えてきた。なぜ太陽は東から昇って西に沈むか、なぜ夜があるのか。人はなぜ陸に住むようになったか。大自然の中での営みがかもした豊饒(ほうじょう)な民話の宝庫が、そこにはあったのだ(アコル著『ライオンの咆哮(ほうこう)のとどろく夜の炉辺で』)

だが、そんな過去から現在へとつながる濃密な記憶と人の絆も切れ切れになっているだろう。国連によると、南スーダンでは人口の四割を超える人々が食料不足に苦しみ、三割を超える人々が避難を強いられた。戦火と飢えの悪夢が人々をさいなんでいるのに、支援のための国連の資金は必要額の二割にも満たぬという。

南スーダンでの国連平和維持活動に派遣されていた自衛隊は帰還したが、今あらためて問われているのは、かの国の人々のために何ができるかだろう。

世界食糧計画のビーズリー事務局長は、緊急支援の必要性をこう訴えている。「飢餓はフェイク(偽)ニュースではない。これは、現実なのだ」


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本書は、南スーダンのディンカに生まれた著者が、子 どものころに村で聞いた神話と民話をおさめたもので ある。2011 年 7 月にアフリカ大陸の 54 番目の国家と して独立した南スーダン。しかし、現在も治安は安定 せず、各地で戦闘が続き、避難民が出ている状況にあ る。著者は、難民キャンプを転々としながら教育を受 け、大学に進学して学位を取得した。その後、ジャー ナリスト兼援助団体職員としてアフリカ各地をめぐっ た経験を持つ。
物語の舞台となるディンカの土地は、白ナイルが流れ、緩やかに北へと傾斜する南スーダンの大盆地に位置している。牛の民であるディンカは、その土地に広範囲に分散して居住している。男たちは成人式で自らと同じ名を持つ牛を得て、詩を朗誦し、牛の角を模してダンスを踊り、牛を愛おしむ。人々はいかなる場合においても牧畜を行うことに愛着を抱いており、雨季と乾季にあわせて永続的な居住地と川岸の放牧地の間を行き来して生活している。
本書には、15 の物語がおさめられている。冒頭にお さめられている「氏族はどのように名前を得たか」は、 ディンカの始原の物語である。もともとディンカは川 の水の下に住んでいた。水の下は、病気も死もないが、 人口が増加しすぎて窮屈になってきた。そこで、漁槍の 長ロンガール・ジエルが、陸地に住めないかどうかを調べに出かけた。漁槍の長は、聖なる槍を持つ司祭で ある。ロンガールは、陸地は獣がいて病気と死が存在 する危険な土地であるため、人間は陸に住むことはで きないことを人々に伝えた。しかし、人々はロンガー ルを殺してでも陸地へ出ることを選んだ。人々はロン ガールを出し抜き、陸地へあがったが、その代償とし て永遠に水の下では生きることができなくなった。そ して、陸地でさまざまな出来事に直面することになっ た。そこで、人々は身を守るために、それ以前から陸 地に棲んでいたほかの動物たちに保護を求めた。これ によって、それぞれの氏族が特定の動物や木々、草や 昆虫と関係を形成することになったのである。
それに続く物語では、ディンカがどのように牛を手 に入れたのか、踊りに欠かすことができない太鼓をど のように手に入れたのかといった、ディンカの生活に 即した物語が並べられている。また、本書におさめられ た物語には、牛、ライオン、狐、ハイエナ、ゾウ、カ バ、鳩、駝鳥など、多くの動物が登場する。特に、聖 なる槍を求めて手負いのライオンに挑む青年の話であ る「ライオンのジェルベック」や、正直者で心優しい娘と対照的な性格の姉が登場する「アチェンガークデ
ィトゥとアチェンガークティー」では、ディンカ、ライオン、角のない牛の関係が興味深い。このふたつの物語では、イオンが人間や角のない牛に姿を変えたり、ディンカがライオンに姿を変え、再び人間に戻ったりする。ここからは、自然とディンカの人々の暮らしがとても親密な関係にあることが読み取れる。このほか、年長者の知恵を伝える話など、訓戒的な物語もおさめられている。
本書は、読み物としても楽しめるだけでなく、物語に描かれる神、人間、動物、そして人々の氏族の関係から、ディンカの世界観や社会組織を垣間見ることも
できるものとなっている。また、本書を片手に、ディンカに関する民族誌を手に取ってみることも良いだろう。ディンカの暮らしぶりや社会、宗教を知ることで、物語に登場する人物や動物たちの鼓動をより一層感じとることができるはずである。本書が読者の想像力を掻き立て、ディンカの豊かな世界へ誘ってくれることは間違いない。

風向き暗号

中日春秋 5/29

「風向き暗号」とは天気予報を利用した暗号方法で、太平洋戦争前に使用されたそうだ。短波ラジオで「東の風、雨」が二回繰り返されれば、それは日米関係の危機であり、同様に「北の風、くもり」であれば、日ソ関係の危機だったという

外交の問題ではないが、「どの方向も全部、風、雨」。二回どころか何度でも繰り返したほうがよいかもしれぬ。この「暗号」は今週以降の安倍政権の先行き予報である。

秘密の「暗号」でも何でもない。首相の友人が理事長である学校法人加計学園の獣医学部の新設計画をめぐる問題で、安倍一強の風向きは誰が見ても乱れつつあるだろう。

先週の小欄でこの問題を実在しない幽霊と主張するのなら、首相官邸は証拠を示せと書いたが、幽霊どころか、その怪物は実在する可能性がさらに高くなっている。文部科学省の前事務次官がその怪物を見た、触ったと証言している。

首相官邸側はその証言者を悪所通いの信用ならぬ人物と宣伝することに躍起のようだが、サスペンス作家も顔を赤らめる、安っぽいやり方こそが怪物の実在を認めている証拠としか世間には映るまい。前次官の証人喚問を拒む自民党の姿勢もまたしかり。そして風は強まる。

<風が吹く時 ゆりかご揺れる 枝が折れたら ゆりかご落ちる>(「マザー・グース」)。風を吹かせているのは、当の首相官邸である。


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(4) Hush-a-bye, Baby

Hush-a-bye, baby, on the tree top,
When the wind blows the cradle will rock;
When the bough breaks the cradle will fall,
Down will come baby, cradle, and all.

おやすみ 赤ちゃん 木の上で
風が吹いたら 揺りかご揺れる
枝が折れたら 揺りかご落ちる
揺りかごごとに 赤ちゃん落ちる

<解説>
英米で歌われる子守唄 の代表的なものです。native American が赤ちゃんを木の枝につるした揺りかごであやしているのを見て作ったという説もあります。イギリスの絵本画家Raymond Briggsが、核戦争をテーマにした『風が吹くとき』( When the Wind Blows ) という絵本のタイトルは、この唄から取 ったものです。




子どもたちへの詫(わ)び状

いばらき春秋 5/28

「分からないなら黒板に聞け」。授業で質問に答えられないと、髪の毛をつかまれ、黒板に頭を打ち付けられた。小学2年時の担任は特異な指導法を実践する女性だった。

ある帰りの会で担任は男子児童の1人を立たせ、この児童が同級生に送ったという手紙をゆっくりと読み上げた。淡い恋心をつづった内容だった。

担任の振る舞いに嫌な気持ちになった。「先生は人間として許されないことをしている」。40年以上も前のことだが、よく覚えている。

福岡県の中学校で教員を務めた村上通哉さんの著書「子どもたちへの詫(わ)び状」を手にしたのは、大学生の頃だ。教え子に宛てた手紙47通が収録されている。読んでいて何度もこみ上げるものがあった。

中学卒業後に小学校時代の出来事を打ち明けた女子生徒への手紙も胸を打つ。女子生徒は、教室でなくなった現金を盗んだと当時の担任に決めつけられた経験を2回も持っていた。著者は教育に携わる一人として謝罪の言葉を記した。

同書には子どもたちとしっかり向き合い、それでも痛恨の思いを抱き続ける教育者の誠実さがあふれていた。最後の教え子たちに向けて、著者は語り掛ける。「一歩でも近い所にいて、一緒に歩いていたかったのだ」 


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暑い夏の季節が来ると、教員採用試験を思い出します。個人的なことですが、30 年以上 も前、私自身も皆さんと同様に苦闘した日々を過ごしました。教育実習を終え、採用試験 の勉強が本格化していく方も多いと思います。皆さんの今の努力が秋にむくわれることを 祈念しています。
「夜スペ」の講義中に何度となく皆さんにお伝えした『教師としての不十分さ』*1を忘 れないでいてください。教師としての不十分さを常に意識していないと、生徒の表層だけ を見て誤った判断をしたりすることがあります。マイナス 200 度の氷がマイナス 100 度の 氷になったとしても、外見上その形状に変化はありません。マイナス 100 度の氷が 0 度に なった時に、氷は解け出します。前者の営みは長い。皆さんが教壇に立っている間に、そ の 100 度の変化を見ることはできないかもしれません。その長い営みの中で、『教師として の不十分さ』をいつまでも持ち続けてください。
そして、100 度の変化のためのたゆまぬ努力と 100 度の変化をただ待つだけの姿勢が、 皆さんの心から消滅してしまう時がきたなら、その時は、潔く教壇を去ってください。私 が皆さんにお伝えできるのはそれぐらいのことなのです。
ともに、がんばりましょう。

*1村上通哉「子どもたちへの詫び状;電気がない」より

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東山魁夷と子どもたちとの心温まる交流を中心に画伯との出会いを綴った実話。教科書の「花明り」の作者に子どもたちが手紙を書いたことに始まり、絵本館の成立まで、独創的な教育を実践したひとりの教師の感動の記。


<目 次>

序 東山すみ

1 はじめに――人間・東山魁夷との出会い――

2 「風景との出会い」

3 文化祭「国語教科書原作者生原稿展」
 1 夢の文化祭
 2 原作者の先生方へ手紙を書く
 3 原作者の先生方から原稿が届く
 4 東山魁夷先生より原稿が届く
 5 さらに原稿が届く
 6 国語教科書原作者生原稿展
 7 文化祭、その後

4 「唐招提寺への道展」
 1 東山画伯より招待状が届く
 2 記念講演会
 3 東山画伯と会う
 4 子どもたちの感動

5 修学旅行
 1 「花明り」の桜と「唐招提寺」を見たい
 2 感動を追う修学旅行 
 3 ロダンと須田国太郎
 4 東山画伯へお願いの手紙を書く
 5 東山画伯からの返事
 6 日程
 7 東山画伯からの電話I
 8 東山画伯からの電話II
 9 新聞社の同行取材
 10 東山画伯より速達が届く
 11 「花明り」の“しだれ桜”を見る
 12 生きている教科書
 13 唐招提寺の障壁画を見る

6 修学旅行の後で
 1 東山画伯の教え、そして“しだれ桜”
 2 文化祭を新聞社主催で公開する
 3 思ったこと

7 市川へお礼に伺う

8 子どもたちの卒業
 1 「花明り」の“しだれ桜”が届く
 2 贈る言葉
 3 「花明り」の“しだれ桜”が咲く

9 東山魁夷装画『子どもたちへの詫び状』
 1 病休か退職か
 2 『子どもたちへの詫び状』

10 筑豊絵本館
 1 東山魁夷常設コレクションとなる
 2 子どもたちの家
 3 東山画伯からの贈り物
 4 残されていた子どもたちの手紙と車椅子の写真

11 東山すみ夫人筑豊絵本館来訪

12 訃報 5月6日、8日、そして、11日

13 東山魁夷先生をしのぶ旅
 1 善光寺花岡平霊園
 2 長野県信濃美術館 「東山魁夷館」
 3 木曽路「心の旅路館」

 あとがき

特別支援学校

大観小観 5/28

障害児のリハビリなどを支援する「県立子ども心身発達医療センター」の開設記念式典で、「永続性」の花言葉を持つハナミズキを記念植樹した。「障害のある子どもを支援する中心的な役割」としてのセンターの永続性を祈念してだろうが、特別支援学校の「草の実校」と「あすなろ校」も隣接地に移転開校し、近くの緑ケ丘特別支援学校を本校に県立かがやき特別支援学校の各分校となるというから、何ともややこしい。

学校教育法の改正で、視覚、聴覚、知的などの障害ごとの学校が特別支援学校に統一された。「特殊学級において教育を行うことが適当なもの」から「その他教育上特別の支援を必要とする児童・生徒及び幼児」へ、法の文言も変わった。隔離教育から、障害のある子もない子もともに学ぶインクルーシブ教育へという国際的な流れが背景にある。

同改正で盛り込まれた特別支援教育とは、個別に教育的ニーズを把握して適切に指導・支援することで、従来の障害ごとの教え方を意味しない。取りあえず障害ごとに分けずに統合して教育することを目指し、やがて障害のある児童もない児童もともに学ぶインクルーシブ教育とする考え方が「特別支援学校」への名称変更にはある。

長く隔離教育をよしとしてきた日本で急な転換は難しい。障害ごとに「分校」とする分かりにくい名称となったのはやむを得ない過度的措置だろうが、県では特別支援教育の浸透で特別支援学校の入学希望者が増えている。分校の移転開校も、学校種が実質固定し、隔離教育の延命にならないか、気がかりなことではある。

指さし

天地人 5/28

 人を指名したり、人数を数えるときの「指さし」のしぐさは、日本人はさほど失礼に思わない。だが、外国人にはひどく嫌がられ、下手をしたら喧嘩(けんか)になりかねないとか。「常識の世界地図」(文春新書)に教わった。

 親指を立てるサインは「よくやった」「OK」の意味。欧米から日本に伝わり一般的になったが、中東などでは侮辱を表すことがあるという。何げないしぐさ、サインも、国によっては別の意味として伝わってしまうことがある。よく気をつけなければならないようだ。

 人さし指と中指でつくるおなじみのVサイン。写真撮影のときにほとんど無意識にこのポーズをする人も多いのでは。ただ、このサインもギリシャでは「くたばれ」の意味となる。手の甲を相手に向けた裏がえしのVサインは、イギリスでは侮辱になるそうだ。

 Vサインをする際は気をつけて-こちらもそんな話か。インターネットに掲載した写真のVサインから、「指紋を盗まれる」かもしれないという記事が、先日の本紙にあった。デジタルカメラなどの進歩により、指の写真から指紋を読み取れるようになったからという。

 指紋情報が悪用されかねず、国立情報学研究所が盗難を防ぐ方法を開発中だそうだ。と、聞いたはいいが、恥ずかしながらアナログ人間にはなかなかピンとこない。技術の進歩とその影をつくづく感じるばかりだ。

笑いは人の薬

天地人 5/27

 笑いは人間に不可欠の原初的な健康法-とフランス文学者の多田道太郎さん。「しぐさの日本文化」(講談社学術文庫)で次のように書いている。<もちろんうれしいから笑うということもあるが、逆に、笑っていると元気がつき、活気がでてくるという面もある>。

 ことわざも笑いの良さを説く。「笑う門には福来(きた)る」や「笑う顔に矢立たず」「笑う顔は打たれぬ」「笑って損した者なし」。ずばり「笑いは人の薬」ということわざもあり、薬と同じく笑いは心身の健康に役立つ、と言い切る。

 青森市内で先日行われた小社主催の東奥情報懇談会では、福島県立医科大学主任教授の大平哲也さんが「笑ってストレス解消! 生活習慣病予防!」と題し講演。笑いが心や体に及ぼす効果や健康との関係について解説した。

 落語や漫才による笑いが、がん患者にどんな影響を及ぼすか-。大阪国際がんセンターは今月からそんな研究を始めたという。2週に1度、落語家や漫才師の公演を患者に見てもらい、免疫力や生活の質の向上につながるか探る。

 初回は桂文枝さんらが病院内のステージで落語を披露した。患者たちは声を上げて笑い「嫌なことを忘れて無になれた」「軽く運動したような爽快感が得られた」と喜んでいたという。研究結果は来春までに発表される。多くの人を笑顔にしてくれるような成果を聞きたいものだ。

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「しぐさの日本文化」
多田道太郎 著
講談社学術文庫 

しぐさは社会の集団につたわる伝承の文化である。本書では様々なしぐさの文化的な意味を紹介している。
日本人特有のしぐさとして筆者が例に挙げているものに「あいづち」がある。
あいづちは聞き手が話者に関心を持ち、理解していることを示すアクションである。私の所持する会話術に関する自己啓発本には、会話で適切なあいづちを打つ方法が書かれていることも多い。日本人にとってあいづちはコミュニケーションツールとして重要なものである。
アメリカ人の教師に「会話中に日本人はたくさん頷づくので、内容を理解していなくても理解しているように見える」と言われたことがある。アメリカは「イエス・オア・ノー」が前提となる社会であいづちが少ない。
日本人は多くあいづちを打つ。その理由を筆者は、共同の前提となる統一された文化があり、相手の感情をいたわることができるためと述べている。
グローバル化が進む現代だからこそ、しぐさの文化的意味を知り、日本の社会的文化を理解するべきだろう。

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12月15日(月)、棚倉町保健福祉センターにて

今回の講演会は、「第2回棚倉町保健協力員研修会・健康づくり講演会」として、棚倉町の健康推進員、民生委員、町民の皆さん約60名を対象に、笑いのある生活から、認知症予防や生活習慣病予防の知識を得て普段の生活から予防をすること、その知識を町全体へ広めることを目的として開催されました。

当日は、「笑いと健康について~笑ってストレス解消!生活習慣予防・認知症予防!~」をテーマに、疫学講座 の 大平哲也 教授に講演いただきました。

講演の中で大平先生は、
● 認知症予防には1時間の歩行や運動
● 食べ物は緑茶やカレーが良いということ
● お酒も飲む量の加減で予防効果になり、ビール1本または酒1合、ワイン2杯程度は認知症になりにくくなること、などをお話ししました。

今回のテーマである「笑い」は、“笑う人に比べて笑わない人は3.75倍認知症になりやすい”ということでした。

ポエトリーエンジェル

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水鉄砲 5/27

 「詩のボクシング」と聞くと「何それ」と思う人が多いかもしれない。リングに見立てた舞台で2人が自作の詩などを朗読して対戦、どちらが観客の心に届いたかを競うイベントである。私も「実物」を映画で初めて見た。

 映画とは、田辺・弁慶映画祭実行委員会が企画、制作支援した「ポエトリーエンジェル」。昨夏、田辺市上芳養の梅畑や天神崎、田辺駅前商店街などで撮影され、先週末から市内の映画館で上映されている。

 「中高年が見ても面白いだろうか」と迷ったが、一足早く試写会で見ていた社内の後輩に薦められて映画館に足を運んだ。

 封切りしたばかりなので詳しくは紹介できないが、実家の梅農家を手伝いながらも仕事に満足を得られない青年と、人と上手く話せない少女の成長物語である。見慣れた田辺の風景が随所に登場し、当地に引き付けた内容で上映時間の95分が短く感じた。笑いとほろりとさせる場面があり、登場人物が魅力的に演出されていた。

 真夏の田辺での撮影。8日間という日程で、暑くて体力の消耗も激しい中、早朝から深夜まで出演者とスタッフが努力したという。パンフレットには、梅干し作業のハウス内が40度以上だったことや梅畑の下草の伸び具合を調整した撮影秘話が記されている。ロケ地を訪れてみたくなった。

 映画は今後、全国各地で上映される。面白いと感じるかどうか、人それぞれだろうが、田辺が大好きな人はぜひ。

人間の将棋

鳴潮 5/27

 将棋の対局で独創的な手を指して相手を翻弄(ほんろう)する。それは、羽生善治3冠ら才能ある棋士の専売特許だった。「新手一生」とは故升田幸三実力制第4代名人のモットーだ。定跡破りの指し手に一生をかけた姿は世の共感を呼んだ
 
 ところが、今では人工知能が人間の考えつかない手を連発して、プロ棋士を打ち破る。ついに、将棋界トップの佐藤天彦名人がコンピューターソフト「PONANZA」に2番勝負で完敗した
 
 ソフトの指し手は縦横無尽で正確無比。将棋はまだまだ進歩する可能性を持っていると、人間に教えているようでもある。折しも佐藤名人は名人戦7番勝負のさなか。人間対人間の勝負が色あせないでもない
 
 ソフトにかなわない将棋界の未来はどうなるのか。そんな不安を吹き飛ばしそうなのが、14歳の最年少プロ棋士、藤井聡太四段の大活躍だ。公式戦19連勝中。実力派棋士を一方的に攻め倒すこともある鋭い着想が持ち味である
 
 プロ資格を得る四段昇格を決めた奨励会三段リーグの成績は13勝5敗。プロ入り後の快進撃が、急速な伸びを物語る。昨年12月のデビュー戦で下したのは、くしくも、”元祖最年少棋士“で最年長の加藤一二三・九段だった
 
 藤井四段の出現は、天の配剤なのか。独創的な将棋で「人間の将棋ここにあり」と、満天下に示してもらいたい。


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四季風 5/27

子ども時代に将棋の面白みを知ったが、長じてからは「マッタ」連発のなれ合い将棋ばかりで上達とは無縁だった。19連勝の中学生棋士・藤井聡太四段の活躍は、彼の将棋に対する純粋な姿勢や勝負に賭ける執念が伝わり、たくましさを感じる。

その折、将棋界で最も権威のある名人が将棋ソフトに完敗。囲碁ソフトは世界最強とされる中国人棋士に勝ち越した。チェスやオセロを含む全てのボードゲームで人間が敗北する結果となった。

「人間の直感力はコンピューターに勝る」とチェスの名人は負け惜しみを言ったそうだが、人工知能(AI)研究者によると、膨大な情報からAIが自ら学習し、判断能力を高める深層学習という技術に強さの秘密がある。その手法で人間の直感力も数式化されつつあるという。

将棋や囲碁には定石がある。将棋の名人は「自分の手順が分からなかった」と嘆いた。AIが定石を超えた一手を常に生み出しているのであれば、人間の勝ち目はなくなるばかり。

現代の人間世界のありようは、学習能力を失ったかのように本来の定石が通用しないことが多い。いっそのこと人間の将来をAIの直感力に委ねることも新たな一手なのかもしれない。