2017年04月16日の記事 (1/2)

察するに余る無念

水や空 4/16

今はあまり聞かないが、「立哨(りっしょう)」とは一定の場所に立って警戒し、監視することを言うらしい。かれこれ16年前の本紙に、この言葉を見つけた。「長崎市立川平小は、保護者による児童の下校時の立哨運動を始めた」。

子どもを狙ったむごい事件が全国で続発したため、とある。本県でもこの頃、小学生の女の子が男に車で連れ去られ、痛ましい姿で見つかる事件があった。子どもを狙う"怪しい誰か"がいないかと警戒し、監視する眼光は、とりわけ鋭かったに違いない。

どれほどの人が絶句しただろう。千葉県松戸市の小3女児が遺体で見つかった事件で、女児の通う学校の保護者会会長の男が死体遺棄の疑いで逮捕された。

男はいつも通学路に立ち、子どもを見守っていたという。いや、そのまなざしには見守る温かさも、不審者に向ける鋭さもなかったとおぼしい。

事件発覚後の入学式で、男は会長として「思い出をいっぱいつくってください」と祝辞を述べたという。それを奪った当人だとすれば、どんな心持ちで言ったものか。

女児の親御さんの悲痛は想像に余る。通学路に立ち続ける人たちの無念もまた、察するに余りある。「何か起こってからでは遅い」という一心でやってきた人。子どもに一片の安心を届けようと続けてきた人。歯がみをこらえきれまい。

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滴一滴 4/16

 新聞紙面には日々、多くの人の名前が載る。うれしいニュースの中の名前は弾んでいるように見える。つらいのはあまりにも早く、人生を断たれた幼い子の名前を目にするときだ。

千葉県松戸市の小学校に通っていたベトナム国籍の9歳の女の子の名は、レェ・ティ・ニャット・リンさん。ベトナム語の「ニャット」は日本、「リン」は輝きの意味で、両親は「日本で輝かしい生活を送ってほしい」との願いを込めた。

より良い教育を子どもに受けさせたいと家族で移住した。2歳で来日したリンさんは日本語の読み書きを熱心に学んだ。将来の夢は母と同じツアーガイドになることで、「日本の友達にベトナムを紹介したい」と語っていたという。

そんな女の子が、なぜ登校中に行方不明になり、殺されなければならなかったのか。近所に住む46歳の男がおととい逮捕され、衝撃が走った。男は小学校の保護者会の会長で、通学路の見守り活動にも参加していた。

許せない。うそであってほしい。誰を信じていいか分からない。その地域のみならず、日本中の親たちの悲鳴が聞こえるようだ。

「知らない人について行かない」という呼び掛けでは子どもを守れないとすれば、どんな防犯教育がいるのだろうか。見守り活動の見直しも求められるのか。まずは一刻も早い事件の全容解明が待たれる。

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鳴潮 4/16

 夢はツアーガイドだったという。出身国・ベトナムの友達に日本を紹介したい、と話していたという。漢字の勉強に打ち込んでいたそうだ。「好」は一つ上の学年、小学4年生で習う。その前から、日本を好きでいてくれたリンさんである
 
 「信」を習うのも、同じく小4。誰も信じてはいけなかったのだろうか。そう教えなければいけなかったのだろうか。千葉の小3女児殺害事件で、近くに住む小学校の保護者会長が逮捕された
 
 容疑者には小さな子どもがいて、見守り活動にも熱心だったようである。リンさんも、毎朝のように通学路で顔を合わせていたのではないか。何事かあれば、きっと守ってくれる。そう思いこそすれ、怪しむことなど、かけらもなかったはずである
 
 危険は、どこに転がっているか分からない。これから、誰を信じればいいのか。小さな子を持つ保護者は、心配を募らせているに違いない。スクールバスなど、新たな安全対策を考えるべき時期なのかもしれない
 
 卑劣の「卑」の字は、中学生になってから学ぶ。「好き」とは異なり、その意味は、相応の年齢にならなければ分かるまい。疑うことも知らないうちに、リンさんは殺され、遺棄された
 
 「なぜなの、どうして」。大声で叫びたかろう。幼い命の問い掛けに、私たちはどう応えていけばいいのだろうか。

地球防衛会議

春秋 4/16

記者「大臣のご所見を」。大臣「存在しない、と断定し得ない以上、いるかもしれない」。UFO(未確認飛行物体)のことだ。映画の一場面ではない。その存在が閣僚間でも話題になった際の記者会見(2007年12月)でのやりとり。

当時の石破茂防衛相は話を自衛隊出動に広げて「地球の皆さま仲良くしよう、とか言ってきても防衛出動になるのか」「ゴジラやモスラに暴れられたら災害派遣だが」「隕石(いんせき)のように意思なく降ってくるわけでもなく…」

架空の防衛問題を映画の世界と絡めて真面目に話した石破さんの面白すぎる会見録を、最近ふっと思い出した。「小惑星急接近 人類どうする」の見出しが付いた共同通信配信記事を見たときだ。

本紙に載ったその記事は、地球に衝突する恐れがある小惑星が見つかった、との想定で、対策会議を5月に東京で開くと伝えていた。米航空宇宙局(NASA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が参加し、机上演習を行う。

太古の昔には恐竜絶滅の原因とされる巨大隕石落下もあった。4年前のロシア南部での隕石爆発で現実的危機感が募り、国連総会で防御構想が承認された。未知の小惑星発見と衝突回避策を探る専門組織が既に動きだしている。

東京での会議をSF映画風にいえば地球防衛会議。石破さんもオブザーバー参加してもらいたい。古い映画の題を借りていうと、きっと会議が踊る。

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ひよっこ

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談話室 4/16

NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」。物語は東京五輪目前の1964年から始まる。有村架純さん演じるヒロインの谷田部みね子は茨城県の山あいに育つ。登場する旧式ボンネットバスが60年代の雰囲気を醸し出す。

ベニバナ、サクランボをモチーフにした朱色とピンクをメーンにして、横に蔵王の雪をイメージした白のライン。ドラマのシーンを演出するバスは山形交通(当時)の統一カラーによる車体デザインをとどめる。その姿に懐かしさを重ねて画面を見詰める視聴者も多かろう。

バスは67年製のTSD40型(いすゞ自動車)。山間部雪道走行用の四輪駆動で山形交通が2台を特別注文した。ドラマのバスは車体横に●の表示。山交バスによると、新庄営業所に配置され、85年まで新庄―肘折間の路線バスとして活躍した。現在はNPO法人が管理する。

「ひよっこ」でヒロインの叔父役を演じる峯田和伸さんは山辺町出身。パンクロックバンド「銀杏(ぎんなん)BOYZ」の音楽活動から映画やテレビドラマへと幅を広げ、個性的なカラーで独特な存在感を放つ。レトロバスもさることながら山形訛(なまり)の茨城弁もなかなかの“味”を醸す。

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世界中の海が

三省堂 5年

世界じゅうの海が  まざあ・ぐうす

世界じゅうの海が 一つの海なら どんなに大きな海だろな。
世界じゅうの木という木が 一つの木ならば どんなに大きな木であろな。
世界じゅうの斧が 一つの斧なら どんなに大きな斧だろな。
世界じゅうの人たちが ひとりの人なら どんなに大きな人だろな。
大きなその人が おおきな斧をとって 大きな木をきり
大きなその海に どしんとたおしたら それこそ、どんなにどんなに大きい音だろな。

{北原白秋 訳}

シャボン玉

三省堂 5年

シャボン玉  ジャン=コクトー

シャボン玉の中へは
庭は入れません
まわりをくるくる廻っています




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三省堂 5年

『耳』

ジャン・コクトー

堀口大学 訳


私の耳は貝のから

海の響をなつかしむ





ジャン・コクトーは二十世紀の初頭から半世紀以上にわたって、
芸術のあらゆる分野で前衛的な活動をした人である。
その活動の根底には、いつも詩があった。

この作品は
『Poesies 1917-1920』
“Cannes”と題して収められた六つの短章の五番目のもの。
富豪の子であったコクトーは、少年時代に南仏のリゾート地で家族とともに毎冬を過ごしていた。その思い出が作品のもとにある。
(『耳』という題は堀口大学がつけたもの。)




原文



Mon oreille est un coquillage
Qui aime le bruit de la mer.


直訳

「私の耳は貝殻で、海の騒がしい音を愛する」




堀口大学は「騒がしい音」を「響」と訳し、さらに「愛する」を「なつかしむ」と訳した。
これにより、堀口大学の訳詩は一挙に(原詩以上に)時間と空間をひろげた。
しかも訳詩は、完全な口語体でありながら、日本の伝統的な七五調になっていて心地よい。


たった二行の詩。
心に響く秘密は比喩にある。
ひとつは形の上から耳を貝殻に譬える。
もうひとつは…。
空洞のなかにある、昔懐かしい海の響き、すなわち故郷の記憶…。

山のあなた

三省堂 5年

  山のあなた

               カール・ブッセ
               上田 敏 訳

        山のあなたの空遠く、
        「幸」住むと人のいふ。
        ああ、われひとと尋めゆきて、
        涙さしぐみ、かへりきぬ。
        山のあなたになほ遠く、
        「幸」住むと人のいふ。
  



三省堂 5年

土  三好達治

蟻が
蝶の羽をひいて行く
ああ
ヨットのやうだ

三省堂 5年

雪  三好達治

     太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

     二郎をねむらせ、二郎の屋根に雪ふりつむ。

 

はしる電車の中で

三省堂 5年

はしる電車の中で   まど・みちお

知ってるとか
知らないとかって
あほらしことのような気がした

はしる電車の中で
いきなり笑いかけられた時のことだ
お母さんに負んぶされた
知らない よその赤ちゃんから‥‥

いっしょに生きてるんだよね!
と いうような
嬉しくてたまらない笑い顔だった

もしも クマにであったら クマに
ライオンにであったら ライオンに
あの赤ちゃんなら笑いかけただろう
いっしょに生きてるんだよね!
と 嬉しくてたまらないように

そして 笑い返しただろう
たぶん クマもライオンも
嬉しくてたまらないように
私が赤ちゃんに そうしたように