2017年04月09日の記事 (1/1)

力による平和

中日春秋 4/9

電車の中で赤ちゃんの泣き声が聞こえてきたとする。声の方向に自然と顔が向く。なんとなく気になる。そんな経験はお持ちではないか。

泣き声を無視できないのは脳の動きと関係がある。英国の大学がこんな実験をした。育児経験のない成人に乳児の泣き声、大人の泣き声、犬の苦しむ声などを聞かせ、脳の動きを調べた結果、乳児の泣き声にだけ、感情を司(つかさど)る部分が極めて強い反応を示したそうだ。反応時間は〇・一秒。幼き者の苦しみに人間は瞬時に反応するようだ。

「赤ちゃんまでが犠牲になった」。シリアの空軍基地を攻撃した米国のトランプ大統領の声明である。アサド政権が化学兵器を使用したと断定し、その対抗措置と説明するが、ほかに手だてはなかったか。

化学兵器によって病院で苦しむ子どもの映像を見た人もいるだろう。あの実験ではないが、泣き声は聞こえずとも、誰も心穏やかではいられまい。許せぬ残虐行為である。

されど、化学兵器使用の証拠も示さず、国際合意もない中での攻撃はあまりに短慮であり、一層の混乱を招かぬか。それを恐れる。

アサド政権によれば今回の米軍の攻撃で子どもが犠牲になっている。また、子どもの苦しみである。その泣き声に反応し怒りは広がり続ける。それが武力攻撃に最後まで慎重であるべき理由であろう。「力による平和」。トランプ大統領の「平和」を疑う。