国語 6年の記事 (1/1)

支度  黒田三郎

学校図書 6年

「支度 」

黒田 三郎

何の匂いでしょう
これは

これは
春の匂い
真新しい着地の匂い
真新しいかわの匂い
新しいものの
新しい匂い
匂いのなかに
希望も ゆめも
幸福も うっとりと
うかんでいるようです

ごったがえす 人いきれのなかで
だけどちょっぴり 気がかりです
心の支度は 
どうでしょう
もうできましたか

学校図書 6年


   土      三好達治

 ありが
 ちょうの羽をひいていく
 ああ
 ヨットのようだ
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きのうより一回だけ多く―阪神大震災で被災したきみへ

学校図書 6年

きのうより一回だけ多く―阪神大震災で被災したきみへ  川崎 洋


家を失ったきみ けがをしたきみ

父さん母さんを亡くしたきみ

きょうだいを亡くしたきみ

じいちゃんばあちゃんを亡くしたきみ

なかよしを亡くしたきみ

けんか相手がいまだに行方不明のきみ

泣いて泣いて泣いたきみ

かわいがっていたイヌやネコをもう抱けないきみ

何日もふろに入れなかったきみ

ごはんが食べられなかったきみ

寒くて寒くてふるえたきみ

いまでもこわい夢を見るきみ

そのほか

わたしが想像つかない苦しみにおそわれたきみ



わたしは65歳

孫のようなきみを

どうしてなぐさめていいか言葉がみつからない

まして励ますなんて

どう言えばいいのか

きみよりずっとたくさんの言葉を知っているのに

わからない



ただ 太陽に手を合わせる

きのうより一回だけ多く

きょう

笑いがきみの顔に広がるように

一回でも多く

じょうだんがきみの口から飛び出すように

一回だけ多く

好きな歌がきみの口から流れるように



おーい きみ

ヒロシマの傷

学校図書 6年

ヒロシマの傷
         与田 準一

 碑 銘     原 民喜

――遠き日の石に刻み 
    砂に影おち
崩れ堕つ 天地のまなか
一輪の花の幻    ――

「たぶん、
 こどものいたずらでしょう。」

だれかがいった。

ねらい打ちされた碑面に
あばたの傷あとがうずく。
……たぶん
  こどものいたずらでしょう。

「そう、
 こどもがやったこと。
 まさか、おとなの……
 とも、いえないではないか。

 〝腸に針を突き刺された〟いたみ。
ぼくらのいたずらに、
 ヒロシマの傷は、よみがえる。」

出発

学校図書 6年

             出発
                 井上 靖

     ぼくは
     マラソン競走で
     白いスタートラインにならぶ時がすきだ。
     軽く腰をうかせ
     きっと遠い前方の山をうかがう
     あの瞬間のびんと張った気持ちが好きだ。
     やがて笛は鳴りひびくだろう。
     ぼくたちはかけ出す。
     校庭を一周し、町をぬけ、村を通り、おかをこえる。
     友をぬいたり
     友にぬかれたりする。
     みなぎってくる
     いろいろの思いをしずかにおさえて
     友と友の間にはさまれて
     先生の笛の合図をまっている
     あのふしぎにしずかで、ゆたかな、出発の時がすきだ。


         
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紙風船

「紙風船」黒田三郎


落ちてきたら

今度は

もっと高く

何度でも

打ち上げよう


美しい

願いごとのように


…………………………

【 逆になった比喩表現 】

※鹿児島出身の詩人、
黒田三郎の詩です。

 あるバンドが、
 歌に仕上げています。

 1970年前後の頃、
 誰も知らない者はいないほどの、
 大人気の曲でした。

 詩人の作品に
 曲をつける。

 当時はこうした風潮があって、
 詩は
 人々の生活の
 近いところで
 息づいていました。

 この詩では、
 〈紙風船〉を、
 〈もっと高く〉
 〈何度でも打ち上げよう〉
 と語りかけてきます。

 バンドが歌うときも、
 軽快なリズムにのってくり返される
 フレーズです。

 紙風船が
 空中を舞い踊る 
 美しいイメージです。

 二連では、
 〈美しい 願いごとのように〉
 紙風船を
 打ち上げようと
 比喩を使って語るわけです。

 ともすれば、
 くじけたりして、
 落ちてしまいそうになるのが
 〈願い事〉です。

 理想と
 呼んでもいいでしょう。

 厳しい現実にさらされて、
 しぼんでしまいそうになる心・・・

 紙風船を何度も打ち上げるように、
 私達の願いを
 打ち上げよう
 
 と語るべきを、

 比喩する側と
 比喩される側の
 立場を逆にしたことで、

 より美しく
 よりインパクトのある詩に、仕上げています。

…………………………

紙風船

歌:赤い鳥 作詞:黒田三郎 作曲:後藤 悦治郎

※落ちてきたら
今度はもっと
高く高く
打ちあげようよ
高く高く
打ちあげようよ※

(※くり返し×2)

何度でも打ちあげようよ
美しい願いごとのように

(※くり返し)

高く打ちあげよう
高く高く

(※くり返し×3)

何度でも打ちあげようよ
美しい願いごとのように

(※くり返し×2)

風景 純銀もざいく

風景
純銀もざいく

山村暮鳥



いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしやべり
いちめんのなのはな

いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな


…………………………

この詩は、全部ひらがなで書かれた三連の詩である。どの連も「9音・9行」からなっており、言葉のリズム、響きを視覚に転化させている。
 どの連も「いちめんのなのはな」を8回くり返すことによって、見渡す限り広々と、一面に菜の花が咲き、黄色い菜の花が大地を埋めつくしている風景が、強烈にイメージされる。
 各連の8行目には「かすかなるむぎぶえ」「ひばりのおしゃべり」「やめるはひるのつき」と「いちめんのなのはな」とは違う言葉が述べられている。きちんとしたひらがな文字の並びの中に「麦笛」「ひばり」「昼の月」がはめこまれていて視覚的にモザイクのようである。
 一連の「かすかなるむぎぶえ」は、菜の花畑の真ん中で耳を澄ますと、人影は見えないが、だれが吹いているのかかすかに麦笛が聞こえてくる様子が表現されている。菜の花畑に静けさが広がっている。「いちめんのなのはな」のくり返しによる視覚的世界の中に聴覚が加わり、視点が移動している。そして、再び9行目が「いちめんのなのはな」となり、視点が菜の花畑にもどっている。
 二連の「ひばりのおしゃべり」は一連の「かすかなるむぎぶえ」と同様に視点が聴覚に移動している。しかし、音を発する位置が同じではない。「ひばりのおしゃべり」は地上からではなく、空中から響かせているものである。「おしゃべり」からは、にぎやかで心地のよい明るさ、無邪気さがただよってくる。一連と同様に、9行目が「いちめんのなのはな」となり、視点が再び菜の花畑にもどっている。
 三連の「やめるはひるのつき」は、視覚的表現であるが、一面の菜の花の鮮やかな風景とは対照的なイメージである。「やめる」は欠陥があるという意味であり、満月と比べてうっすらと白く輝いている月、半月(上弦の月)を表している。白っぽくかすんだ昼の月は、菜の花畑を際立たせ、強く印象づけている。昼の月は、ひばりよりももっと上空にあり、視覚の範囲が広がっている。そして、9行目は「いちめんのなのはな」となり、視点が再び菜の花畑にもどっている。詩の最後には句点が入っていて、広々と広がる菜の花畑に「麦笛」「ひばり」「昼の月」がはめこまれて、風景画のモザイクが完成したことを表している。
 最後は、題名読みである。なぜ「純銀もざいく」としたのだろうか。広々とした菜の花畑に春の明るい太陽が当たってきらきら輝き、銀色に見える。そればかりではない。「ひばり」「昼の月」も銀色に輝き、まじりけのない銀一色のモザイク画のような風景である。

2 授業の様子

教師  この詩には、どんな技法や工夫がありますか。
子ども 全部ひらがなで書かれている。
子ども どの連も9行で、1行は9文字になっている。
子ども 8行目だけちがうことばになっている。
子ども ひらがなで書かれているので、やわらかい感じがする。
子ども 菜の花が小さくてやさしい感じがするので、ひらがなにしたのだと思う。
子ども どの連も9文字の行になっているので、詩を見ると長方形のかたちに見える。
子ども 行の終わりが「なのはな」「むぎぶえ」「おしゃべり」「ひるのつき」となっていて、「です」がつ
    いていない。
教師  「です」がついているときと比べてどうちがいますか?
子ども 「です」がないほうが、きびきびしていてリズムがある感じがする。
教師  「かすかなるむぎぶえ」「ひばりのおしゃべり」「やめるはひるのつき」をなぜ8行目にしたのです
    か。
子ども 7行目まで「いちめんのなのはな」をくり返すと、菜の花畑がものすごく広々と広がっている感じがす
    る。
教師  「かすかなるむぎぶえ」からどんなことがわかりますか?
子ども 菜の花畑が広いので、麦笛がものすごく小さく聴こえた。
子ども 小さな麦笛の音が聴こえるくらい、菜の花畑は静かだった。
子ども 「いちめんのなのはな」のくり返しは目で見た様子なのに、この行だけ耳で聴いた様子を書いている。
教師  では、二連の「ひばりのおしゃべり」はどうですか?
子ども この行も耳で聴いた様子を書いている。
教師  ひばりはどこでおしゃべりしているのですか?
子ども 空中です。
教師  三連の「ひるのつき」は?
子ども 上空です。
教師  地上→空中→上空と垂直方向に風景が広がっていることがわかるね。
教師  「やめる」は欠陥があるという意味です。満月と比べてどこが足りないのですか?
子ども 昼の月だから、色が白っぽい。
子ども 月の勉強で習ったように、春の月は上弦の月で半月になっている。
教師  菜の花畑と昼の月を比べると、どうちがいますか?
子ども 菜の花の黄色がより目立つ感じがする。    
(後略)